大手町に棲む魔物

 ことしの箱根(復路)は、熱かった。個人的に。
 母校の陸上部は例年、敵は「棄権」か「繰上げスタート」か「関東学連選抜」という、推して知るべしなレヴェルなんだけれども、なんとなんと、ことしはシード権争いに加わってしまったのです。もしもシード権をゲットしたなら、大學創立百二十余年で初! の快挙(といっても、箱根駅伝自体の歴史が九十年ほどなんだけど)。
「ぼくの母校はもう優勝を決めたから、あとは絹子のところを応援してあげるね」と鷹揚にいう主人にイラッときつつ、それはもう熱くTVのまえで観戦しましたとも。八位を決める集団に四校のランナーがいて、つまりこのうち一校だけはシード権なし! という状況で飛び出したのがわが母校の一年生アンカー。が、まさかのコースミス。箱根の山には魔物が棲むとひとがいうけれど、大手町にも棲んでいるなんて……!
 結局、コースを修正したあと、ひとり抜いて、ぎりぎり十位でゴール。この間、リアルタイムで観ていたのに、勝手にスローモーションで見えたもんね。観ているだけで1区ほど走ったくらい、精神的に消耗した気がします。
 肝心なところで抜けていたり、つめが甘かったりする、ぼけぼけな校風が全国的に知れ渡ってしまったことよと同級生と嘆きつつ、寿ぎのことばをさえずりあいました。ついでのように賀詞交換も。
 あのアンカーくんが来年走るときはぜったいにあのシーンがこれでもかとリピートされるんだろうなあ、と予想して、おお、この、一年後のことをいまから考えたりできるのがシード権ってやつなのね! と実感しましたよ。