ひみつの調査

 さいきん、残業が増えました。
 もともと任せられているルーティンだけですでに定時あがりにぎりぎり、というヴォリュームだったのに、このごろはほかに、突然舞い込むイレギュラーな作業も任せられることが多くて、どうにもこうにも。
 まだ独身で実家住まいだったとき、最大瞬間風速月200時間残業をやったことがあるけれど、それとは比べるべくもない微々たる時間数でも、結婚を機に転職して以降の定時生活に慣れた身だと、いろいろとしんどいです。体力が落ちているというのも理由のひとつだし、私が家にいないと家事をするひとがいないので、自宅が荒むのもまた、プレッシャー。
 しかし、忙しいと愚痴っているだけじゃつまらないので、それなら、どれくらいの残業時間だったら体力や家事の時間もキープできるんだろう? 限界はどこにあるんだろう? と、週ごとの残業時間の合計がいろいろになるよう、引き受ける仕事の量を加減したりして、試してみました。
 調査結果。
 週6時間以内だと家事と仕事と趣味それぞれに時間を配分できて、なかなかいいバランス。
 週12時間を超えると、お惣菜を買いたくなっちゃう、お洗濯ものが溜まっちゃう。
 週20時間を超えるとあからさまに体調が悪い。
 ……ふーん。つまり、残業時間が多くても週6時間から12時間のあいだになるよう仕事をこなしていけば、それなりに公私とも充実した生活が送れるわけなのね。
 こんごの指標となる、よい数字がとれたわあと、内心、悦にいっていました。
 が。週20時間残業の実験を終えたあたりで、
「あれ? 絹子さんて、もしかして残業に抵抗ないひと?」
 と職場のひとに気付かれたらしく、以前にも増して仕事をふられるようになってしまいました。
 いやいや、あれは実験だったんです、調査だったんです! とは、もちろん言えず……。こまった……。