『ミネハハ』

 映画『エコール』(id:moony:20070821#p2)の原作。映画の、あの、水や森の清らかなイメージは原作からちゃんと受け継がれていたのだ、という発見が最大の収穫。筋や設定については、基本的に小説のなかに出ているものやことを組み合わせてできているけれど、小説より映画のほうがずっと、謎は謎めいて、世界はよりちいさく閉鎖的で、そして、少女ばかりなのだった。(ただ、小説のほうで、最上級生が初潮を迎えて居心地の悪さを憶える等、少女たちの心理について書き込まれているのは、おもしろかった。これは映画のほうで描いたら蛇足なのだろう)
『ミネハハ』は『サスペリア』の原作でもあるらしい、とは以前から小耳に挟んでいて、だとしたらこの小説からあの映画を撮ったダリオ・アルジェントの夢想力もそうとうだなあ、と読みおえて関心していたら、調べてみると、これは『エコール』の監督ルシール・アザリロヴィックの勘違いが発端の、誤謬らしい。*1
 市川実和子による訳(といっても、訳者あとがきによれば、別人による下訳を「自分の言葉に色染め」とのこと)は、ときおり、意味がとれない文章になっているところがあって、小説を読む楽しみを損ねている気がする。どうしてこのひとに依頼する必要があったのか、そしてこの訳でOKが出たのか、とてもふしぎ。映画の公開当時、Agnes b.球体関節人形とコラボレート企画があったらしいので、その一環の、関連商品としてのアイテムなんです、といわれればなっとくの、かわいらしい装幀ではあるけれども。

ミネハハ

ミネハハ