あらたまの

フルハウス』は、けっきょく、観ました。
 で、すいみんぶそくの目をこすりつつ、朝、しつけ糸を切る作業。黒地に赤い線のはいった板締染の紬に、トランプのカードが散る柄のベージュの半幅帯をあわせたら、なんか……すごく……地味。『七緒』の紙面ですら浮きそなくらい地味。せっかくお正月なんだから、ちょっとはでな梅の柄の帯をあわせればよかったかなー、と後悔したけれど、時間が迫っていたのでそのまま。白うさぎの帯留をしようとしたらちょうどいい帯締がなくて、お裁縫箱に眠っていたヴェルヴェットの黒リボンで代用。やっと編みあがったケープがうまくまとまらないので数年前バーゲンで買ったままいちどもつかわずにいたうそっこカメオブローチで留めて、てきとうなバックがなかったので黒サテンにお花のビーズ刺繍のがま口ポシェットをななめがけ。……なんだろうこのスタイルは、どっちかというと『KIMONO姫』だな……、と思いつつ初詣へ。にもかかわらず、落ち合ったIくんの反応は、いままででいっとう好評でした。なぞだ。
 というか、ひさびさにフルメイク+髪をセット+コンタクト着用のデートだったので、Iくんがきょうだけは終始、さいきんにない半音あがりぎみのテンションでいたのは、そのせいだったのかもしれなかった。「きょうはきれいだね」となんどもいわれて、「きょうは」ってなんじゃい、とつっこんだけれど、内心は、そうだよねえ、私も鏡を見て、あれ、私こんな顔にもなるんだっけってびっくりしたもん、と、思った。ここのところずうっと、なんとなくおしゃれがおっくうで、すっぴんやらめがねやらでいて、Iくんも、それでもべつにかまわないよ、と口では言っていたけれども、できるだけきれいでいるようつとめるのは、すごくかんたんで、しかしとても効果が望める、たいせつなことなんだなあとじみじみ。
 おみくじをひいたら、ふたりともおなじ兆をひきあてた。これはどういうことなのか。
 お参りのあと、珈琲を飲みに、とっておきの喫茶店に数年ぶりに行ったら、ビルの裏口からしか入れない、しかも地下にあるという、ちょっと秘密基地てきな雰囲気のあったちいさなお店が、おなじビルの上階におひっこしして、以前より広く明るい店内になっていたのでびっくりした。まえは注文と給仕とお会計以外、口をひらかなそうな、店員さんの孤高っぷりだったのに、きょうは、これがひっこしてはじめてのお正月なんですよ、だなんて、おじさん店員さんがにこにこと話してくれた。あらたまの年月。