『バットマン ビギンズ』

ダークナイト』を観たいがために『バットマン ビギンズ』をDVDで予習。
 この映画はたしか公開当時、豪華キャストで話題になっていて、ゲイリー・オールドマンのなまえも並んでいたので、あら、どんな悪役をやるのかしら、と興味をひかれた憶えがある。
 なのに、ゲイリーの役ったら、バットマンに協力する刑事役だったわよ! ふつうに正義側のひとよ! 悪人でも人外の怪物でもないゲイリー・オールドマンを、私、初めて観た気がする……! よりによってヴィランまみれの『バットマン』でよ!!
 これはなにかシリーズを覆う壮大な伏線なんじゃないのと訝って調べてみたけれど、ゴードン刑事はバットマン世界においては正義側のひとという伝統らしいので、「予想だにしなかった裏切り」とかはないみたいなのだよなああ。
 そして、私がもっとも親しんだバットマンは、過去のどの映画のそれでもなくアニメ版のバットマンだったので、押し出しの強いアルフレッドも、世間へのカムフラージュとはいえプレイボーイを演じられるブルース・ウェインも、ちょびっと意外だったのでした。ストイックで落ち着いた雰囲気の慈善事業家とイギリス仕込みの執事ではなかったのか。
 バットマンの魅力って、ようするに、彼が心を病んでいるところだと思う。たまたま彼の行動が正義や慈善活動に向かっているだけで、過去のトラウマが彼を駆動させている等々、敵である悪役たちと根っこのところは変わらないというのがバットマンの世界の暗黙の了解だと思う。
 なので、女の子をはべらしたり享楽的に振る舞うことができるというのは、ブルースってばずいぶん器用ねえというか、健全なように思えたことでした。
 もっとも衝撃的だったのは、渡辺謙の登場シーンの短さでしたが。
 と、つらつら聞き連ねましたが嫌いじゃない雰囲気なので、そしてキリアン・マーフィがじつに好みの雰囲気なので、『ダークナイト』に期待です。