『ダークナイト』
そんなわけで(id:moony:20080812:p1)、『ダークナイト』。
21世紀で、いまのところいちばんおもしろい映画を観てしまったわ……というのが、エンドロールが終わった直後思ったこと。
感想を書きつらねているあいだに接続詞だとか、よくわかんなくなったので以下箇条書きです。
- なにはなくとも敵役のジョーカーがいい。むしろこれはジョーカーの映画。狂っていて、気持ち悪くて、働き者! 手ずからバスーカ砲を撃つし、ナース服で病院に侵入するし(ちょびっとかわいいと思ってしまったのは墓場まで持っていくひみつ)。演じたヒース・レジャーが亡くなったこと、そして素顔はとてもいい男だったことを観終えたあとに知ってとてもとても驚く。
- クリスチャン・ベールのバットマンは、ときどき質量が無くなっているのがいい。闇が凝って湧いてでたように佇んでいると、カオナシみたい。マスクをつけているときは声まで低くておじさんくさいのに、素顔だと目元がかわいらしいの。「ひとは殺さない」というルールを自分に設けて、自縄自縛になっているくせに、殺さなければいいとばかりに、室外にいるゴードンの静止が入らないようドアを封鎖してからジョーカーに暴力を振るったり、マフィアを高いところから落として脚を骨折させたり、いまこの瞬間にゴッサム・シティでいちばん悪いのってジョーカーじゃなくてこのひとだな、と思わせるシーンもあってこれも最高。
- トゥーフェイス役のアーロン・エッカートはなんといっても金髪とそして割れた顎! まさに光の王子さまというルックス。でも、序盤からちらっちらっとたまにへん。
- しかし最強なのはアルフレッド。「だからいったのに」ってなにあれ! もう反則! かわいすぎる! サンオイルまみれになってしまえ!
- と書いているとまるでこの映画の売りはいい男といいおじいちゃんだけのようで語弊があるのですが、いちばん痺れたのは、贅肉を削ぎ落とし削ぎ落とし、ひとつとして無駄がない映画としての構成です。なにげない会話もぜんぶ伏線。途中、このひとを映すの0.5秒だけ長いと思ったらそれも伏線。なにもかもにも意味がある。五時間くらい映画館にいた気がするけれど、じっさいには二時間半でした。濃密だった……。ふつうの映画ならここで終わるだろうなってところが2箇所くらいあった。
- でも私はだれかひとり選べっていわれたらブルースだなあ……。
- (訊かれてませんね、そんなこと)
- キリアン・マーフィの登場シーンは、悪夢のように短く。この事実は受け入れがたいが、あいかわらず卑怯なブツを使っていたからあれ別人じゃなく本人だろうなあ、とうっすら諦観していたらそのとおりだった。ああ。
- 「お前が10分前にやっておくべきだったことをしてやる」が流行りそう。個人的に。
- で。もちろん続編はつくられるんですよね? ね? と、こんなに脅迫的に思った映画は生まれてはじめてでした。
- モーガン・フリーマンの恢復を心から祈ります。
フィリップ・シーモア・ホフマンがペンギンをやるとかアンジェリーナ・ジョリーがキャットウーマンだとか、どこまでほんとうかわからないあれやこれやの次回作への噂をききながら、そうかアメコミというのは日本では大河ドラマとか忠臣蔵みたいなものなのだわと。あの役者さんがあの役なんてうってつけねえとか、えー、あのひとがあの役をやるのはどんなもんだ、とか。そういうやきもきは、楽しいものです。