レディグレイをおいしく感じる季節

 暑さのあまりなにもする気が起きず……という書き出しはとても5月上旬の日記のものとは思えない。でも事実なのだからしょうがない。お洗濯以外の家事は、日が暮れて涼しくなってからする! と宣言して主人と近所のスパへ。
 スパにはいつも夜に行っていたけれど、夕暮れまえの、いちばん風が動くときが、露天風呂はさいこうなのだ。ということを知り、得した気分。そしてこの時間帯はおばあちゃんたちが多く、みんなのんびりと夕涼みをしているのだった。なんだか、夏はチョビがいる場所が研究室でいちばん涼しいところと知った菱沼さんのような気分に陥る。
 帰りみち、夏の夜の匂いがして、いくらなんでも早すぎ、気のせい? とびっくりする。夏の夜の匂いって、いちねんでいちどだけ、春と夏のあわいに感じとることができる、亜熱帯の匂いだ。でも帰宅したニュースが真夏日といっていたので、むりもないと納得する。だいいち、アイスで淹れたレディグレイをおいしく感じる季節は、まごうことなき夏だ。むりもない。
 でも私は5月の午下がりがこの世でいちばんうつくしい時間だと思っているので、そんなに急いで夏にならなくてもいいのにねって思うんですよ。