『THIS IS IT』

THIS IS IT』を観ました。
 これは同名のコンサートのリハーサル映像。“ファイナル・カーテン・コール”と予告されたコンサートのリハーサル映像。そして幕があがることがなかったコンサートのリハーサル映像です。
 私はマイケル・ジャクソンの作品にはほとんど触れたことがなくて、なにせあの『Thriller』のPVも全編通して観たことがないという門外漢です。昔むかし、TDLにあった『キャプテンEO』をいちど観た経験だけが唯一の例外。
 そのアトラクションのマイケルはすごくかわいくてかっこよかったのに、TVから流れてくる彼のエピソードはたいていが醜聞がらみで、相反する印象がうまくひとつの像を結ばなかったのだけれど、この映画(といえるのかどうか。しかし、映画館の大きなスクリーンと音響設備で味わったほうがいいことは確か)のなかのマイケルもまた違った印象でした。自分の年齢の半分くらいのダンサーたちを従えて、息を乱さず踊る。優しい、か細い声で話すのに、ショー演出のアイデアを出すときは力強く迷いがない。
(「私は永遠に謎でありたい」と言い遺した王様が、かつていたなあ)
 コンサートの監督がそのまま編集もしたという映像は、お涙頂戴のドキュメンタリのように、安っぽく彼の死の気配を感じさせるようなところ微塵もなくて、まあ、そんなことは監督自身がとてもできなかったのは見ていればわかる、だって映像のなかで監督もダンサーもミュージシャンもみんな、いいコンサートをつくることに一心にうちこんで、マイケルとともに仕事ができることに、とてもしあわせそうな顔をしているんだもの。
 死去当時、印象深かったことばはふたつありました。ひとつはマドンナの"Michael Jackson was born in August, 1958. so was I. "で始まるスピーチの、"All I could think about in that moment was that I had abandoned him. That we had abandoned him."というくだり。もうひとつはマイケルの長女パリスが嗚咽交じりに語った"Ever since I was born, Daddy has been the best father you can ever imagine."。
 マイケルがどれだけすごいエンターテイナーなのか、知ろうともせずに、私は過ごしてきたんだと思います。