『君がいない夜のごはん』

 本のタイトルは、収録されているうちの一編、『妻がいない夜の御飯』から。

君がいない夜のごはん

君がいない夜のごはん

 しかし、『妻がいない夜の御飯』だと、
「結婚できる年齢のひとは、自分のごはんくらい自分で用意できないとねー」
 と思うのに、
『君がいない夜のごはん』だと、
「私がなにか食べさせてあげなくちゃ!」
 と思うのは、なんででしょう。なんでかなあ。
 というわけで、今月のほむ本(先月→id:moony:20110627#p1、先々月→id:moony:20110525#p1)は、母性本能をつまみ食いしている(偏見)著者らしいタイトルの、食にまつわるエッセイです。そんなテーマなのに、あんまりおいしそうな食べ物が出てこないあたりがこの著者らしいです。おそろしかったり、ものさびしかったりする食べ物ばかり。たとえば、ラブホテルで食べる鰻。コンビニのおにぎり。フルコースのあとのほうにお肉が出てくるしゃぶしゃぶ食べ放題。こうタイプしていても「あああ……」ってげんなりするわ。
 大学生に囲まれて、「この子たち、みんな平成生まれか。生まれたときからアイスクリームがハーゲンダッツか」とくらくらするほむほむ。言いたいことはわかるけれど、あいかわらず世界の捉え方がすこしへんです。
 そして、これまでわりとなぞのヴェールにつつまれていたほむほむの奥様が、この本では頻繁に登場します。分厚いハニーフレンチトーストのやわらかいところだけを、制止されなかったら四個ぶんもひとりで食べてしまうひとらしい。いやあ、奥さんのほうも、なかなか、ねえ。そんな奥さんがほむほむとの結婚当初、恐怖を感じたのは、ほむほむの実家を訪問した際におみやげにともらった苺のヘタがすべて取り除いてあったことだそうで、それはホラーだよね、どれだけ過保護に育てられてきた人間を伴侶に選んでしまったのかと戦慄するよね、といたく共感しました。新婚生活のエッセイとしてもおもしろいです。
 そのほか、蟻を食べるひととか、「好物はわんこそば。理由はリズムがいいから」というひとだとか、ふうがわりなひとたちがいろいろ登場。個人的に、いちばん感動したのは、お肉大好き! 牛より豚のほうが肉っぽいから好き!! という女性作家Kさんのエピソード。「鶏肉はどうですか?」 と問われて、「あれは魚です」と一刀両断しているのです。わー。すごい断言力と説得力。私は逆に、お魚と鶏肉は好きだけど、牛や豚はそれほどでもないなあとつねづね思っていたので、やっぱり、魚&鶏と牛&豚はそれぞれ異なるグループだったのねー、と納得です。反対勢力(?)のひとと認識が一致すると、自分の見解が裏打ちされたような、うれしい気持ちになりますね。
 ところで、ほむほむって、スタバで「本日のコーヒー」以外のオーダーができるのかしら。なんだかしんぱい。
(……とか書いていたら、スタバに関する本を出していたようです。こんど読んでみよう)
人魚猛獣説 (スターバックスと私)

人魚猛獣説 (スターバックスと私)