『陰陽師 玉手匣 1』

 で、そのう、満を持して、おそるおそる、読みました、『陰陽師 玉手匣』第一巻。
 どうしておそるおそるかというと、『陰陽師』の前シリーズは後半、夢枕獏の原作からどんどん離れ、お話の構想が膨らみすぎて収拾がつかなくなっていたという、過去のいきさつがあったからです。
(全十二巻の予定の単行本が十三巻まで出たときの驚きは忘れられない。あれももう七年前か……)
 絵柄は、だいぶふんわりとした印象に変化していました。
 ちなみに、私の好きな安倍晴明像は、
「朝廷でさほど高い地位なわけではないけれど、陰陽道の才では有名な官吏」
 です。
「母親は狐」と噂されるような異能のひとが、人間社会の官僚機構に組み込まれて、平安京で起こる、たいらけくもやすらけくもない事件にかかわりつつ、しれっとして生きているのが、ギャップでおもしろいんだと思うの。
 この作品の晴明は、前シリーズの後半からもう、もはや人間だか物の怪だか神だかわからない、超越した存在になっていて、今後どうなっちゃうんだろうと心配しましたが、新シリーズでも、自宅で烏帽子もつけないで過ごしてるので、出仕する気配はさらさらなさそう。なんだか、早い段階で諦めがついて、よかったです。
(解き髪の晴明って、作者のお気に入りなのかなあ)
 しかし、なんだろう、この、昔あこがれだったひとがいまは別天地でしあわせに生活しいているのを、こっそり見届けて、そんな自分にげんなりするような、やるせなさ。

陰陽師玉手匣 1 (ジェッツコミックス)

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