『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』

 タイトルはソーなんだけど、その弟、ロキが主人公みたいな映画でした。
アベンジャーズ』(id:moony:20120922#p1)でも悪いことをやった結果、収監されてしまうロキ。獄に繋がれた他のわるものが牢屋破りをしたとき、たぶん、これで兄たちがすこし痛い目でも見ればいいや、とでも思って秘密の通路の存在を教えてしまうのだけれど、その結果、ロキのたいせつなひとが失われてしまい大ショック。しかも自分がそれほどショックをうけるくらいに相手をたいせつに思っていたことに失ってから気づいてもうやけくそ! ……というのが今作のロキです。こう書くとどうしようもないな、ロキ。
 でも、隙あらば他者を唆すロキは、しかし、己の内なる自分が発する「他者を唆せ」という声に抗えていないのだろな、というところがなんともセクシーなんですね。『アベンジャーズ』でのまぬけで憎めない敵役だったロキも好きだけれど、地球より異世界アスガルドが舞台のほうが、トム・ヒドルストンの、正統派ハンサムではないものの雰囲気のある、芝居がかった演技が映えるのでした。
 いっぽう、ほんとうの主人公のソー。「このひと、前作(id:moony:20120506#p1)の笑顔とかすっごくすてきだったでしょ? 憶えてますかみなさん? これで思い出します?」という声が聞こえてきそうな、むだに長いアップのシーンが多々あって、「憶えています、憶えています」と首肯しながら観ました。
 クリス・ヘムズワースもやっぱり正統派ハンサムというのとはすこし違うのに魅力的で、ついつい見入ってしまう。このひとの芋かわいさは若いころのブラピのそれと一脈通じるものがありますね。『リバー・ランズ・スルー・イット』のときにはたしかにあったのに、『セブン』や『12モンキーズ』のころにはもう失われていた芋かわいさね。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では似合わないヴェルサイユ的な衣装を着せられているうえに、よりによって正統派ハンサムのイコンであるところのトム・クルーズが隣にいるという対比のせいで「こ、このひとはハンサムなの? ただのゴリラなの??」と困惑しながら注視した結果、「ゴリラとハンサムは両立するな」と納得させられてしまうあのふしぎな魅力ね。いまのクリス・ヘムズワースにはそれがある。なにが源なんだろう? 若さ?!
 ……と、二十年ものあいだ、こころのなかだけに留めておいた「ブラピってゴリラ系ハンサム」というきもちを、はからずも吐露するはめになってしまいましたが、これは『ダーク・ワールド』の感想です。っていうかこの文章、「ハンサム」って単語がこれで7回も出てくる。えっと、ストーリーのほうは、ひと言でいうと、「平和は遠そうだなあ」という感じです。あと「地球側のロケーションがイギリスなのは、アメリカだとキャプテン・アメリカやアイアンマンが出張ってきちゃうからだろうなあ」とかとか。まあ平和になったら『アベンジャーズ』シリーズ終わっちゃうからね。ひきつづき、ロキには地球に現れて場違いにノーブルなスーツ姿を見せてほしい(今作はそれがなくてすごくざんねん)、クリス・ヘムズワースにはその芋かわいさを維持していただきたい。つぎは『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』です!