川上弘美『東京日記 卵一個ぶんのお祝い。』

 雑誌『東京人』で連載されている川上弘美の日記をまとめたもの(『東京人』が東京近郊でしか売られていないことを、このあとがきで初めて知った)。
 川上弘美の日記文体は小気味いい。やっぱり終止形か。終止形の語尾だと、旧き良き日記然とする。
 内容はあいかわらず、すこしふしぎですっとぼけた感じなんだけれど、とある年の春の日記の数日間が、頁が薄紅色にみえてくるくらいに桜まみれのうつくしい記述で、ほかとはあきらかに雰囲気が異なる。こんなふうに書かしめる桜という花はやはりなにか魔力があるのだと思う。

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。

東京日記 卵一個ぶんのお祝い。