秋色の

 ことしのおしゃれの個人的課題はスカーフだったこと、すっかり忘れていた。生成色の、わりと生地のしっかりしたワンピースをもっていて、これは差し色がなければ着られないわと春の終わりにスカーフを物色しに行ったら、なんだかぼへーっとした色合いのものしか売っておらず、いちおう買ってはみたものの結局いちどもつかわずに夏に突入していたのだった。
 そんなんじゃあっというまにスカーフどころかマフラーの季節よ、来年よ! と己を叱咤して買いに行ったら、こんどは甘辛い感じの、つまり好みのどまんなかの色合わせの柄がいっぱいあって、むしろありすぎてこまった。おなじ柄を色違いで買ってしまったよ。淡いベージュ地に桃色と桜色のストライプで、ところどころに葡萄色の水玉の配されたものはワンピース用。それとパンツスーツのときのための、白地にラヴェンダーとグレイで、アクセントが黒のもの。
 スカーフは、買うなら秋ね。憶えた。





 B嬢は朝型で、毎朝遅くとも六時には起きるのだそうだ。べつにオフィスが遠く通勤に時間がかかるというわけではなくて、朝、お茶したりお洗濯したりするんですって。そんな生活、ちょっと憧れる。
 ああ、私のいまの生活のあれこれがだめなのも夜更かしがすぎるせいじゃないかしら! Iくんが宵っ張りで、日付が変わってから『フレンズ』を観はじめたとしても、もう、ほうっておいて寝てしまおう!
(でも、ぷかりぷかりと池の底から水泡が浮かび上がるみたいに、深夜、アンテナに新着日記があらわれるのが好きで、つい夜更かししてしまう)
 お茶を楽しむ余裕すらある朝のひとときというのは、私にとっては縁遠すぎて、まるで地図に描かれていないどこか異国みたいだ。そこに行けばどんな夢も叶うユートピアと囁かれていそう。だから憧れてしまうのね。