月の船、星の林

 移動するのに電車の乗換が4回必要という、うそみたいな客先(それでもオフィスからドアtoドアで1時間弱くらいなの……)にて、きょうはお仕事だった。移動だけでぐったり。
 でも、帰り道、超法規的措置に近いルートを通る臨時列車がちょうどやってきたので、乗換1回ぶん得をした。臨時列車ってなんだか旅気分! と、ちょっと機嫌上昇、ぐったりを忘れる。われながらたんじゅん。





 電車のなかにちらほら、芒を持っているひとがいるなあ、と思っていたら、きょうは十五夜だったのね。
 こういうときに、なにか中秋の名月にちなんだ歌でも口ずさめればいいのだけれど、月の出てくる和歌でいっとう好きなのは、三日月の歌なのだった。

 振仰けて若月見れば一目見し人の眉引思ほゆるかも(大伴家持

 夜空にかかる細い三日月が、ひと目だけ見かけたあのひとの眉のよう、だなんて、思ってみたい思われたい。万葉の歌は喩えが新鮮で、すてきだな。あと、これもきっと満月ではないけれど、好きな歌。

 天の海に雲の波立ち月の船 星の林に漕ぎ隠る見ゆ(柿本人麻呂