あたらしい街と夢のはなし

 金曜日、Iくんの引越し先の部屋に行った。
 喉を痛めたIくんは、変声期の中学生のような声になっていて、胸がキュンとした。もしやこれは……「萌え」?
 ガス屋さんが来てくれていろいろと手続きをしたり、IKEAで買った家具が続々届いたり。いちどはぜったい言うだろうな、とは思っていたけれど、五階にあるその部屋の窓から下を見下ろして、「ひとがごみのようだ」とIくんが呟いていた。聞かなかったふりをした。
 荷物の配置を済ませたあと、外へくりだして、様子がおかしい生鮮食品スーパー(サニーレタスがひと束5円……)とか、パン屋やドーナツ屋さん、花屋さんを巡って歩いた。ほかの通行人がみんな、日常的なかおをして行きかうなかを、まるで冒険ちゅうみたいな、初めて感まるだしできょろきょろしながら歩いていたので、きっと浮いていただろう。
 安い定食屋さんで夕ごはん。





 翌朝、起き抜けに、Iくんに夢の話を聞かされた。深夜、熱にうなされて見た夢は、IKEAの組み立て式本棚を私がピラミッドの形に組み立てていて、「できたのー!」と喜んでいるさまがあんまり嬉しそうだったから、それはなにか違うよ、と指摘できずにこまった、という内容だったらしい。ああ、それは、悪夢だわねえ。と、同情しながら聞いていたら、話は終わらなかった。
 それでIくんが目を醒ましたら、横で寝ていた私が寝言で「そんなところさわっちゃだめ」と言った、という。試しにIくんがつついたら、「だめだってば」とさらに寝言で言った、という。
 えー。ぜんぜん記憶にないんですが。
「で、夢のなかで、だれとなにをしていたのっ? 僕が熱でうなされているあいだに!」
 と、本棚の夢の件も含めて怒られる。なんだかいろいろ、理不尽な話だ。
(そりゃーやっぱり、私の夢のなかでも、組み立て作業に勤しんでいたんじゃないの?)





 ワンマイルウェアに、ゆったりしたワンピースがほしいのだけれど、昨今お店で売られているのはどれもレギンス着用前提のチュニックふうの丈ばかりで、こまってしまう。ムーミン谷のヘムレンさんみたいなぞろっとした服がほしい。