つぎの春は

 秘密結社としての株サークル(id:moony:20070424:p1)は、あいかわらず、つづけています。
 先日ひさびさに集会したら、参加メンバーのうちのはんぶんが、「こんな仕事もう辞めてやる!」とカミングアウトする流れになり、今秋には転職するつもりで、でも、ほかのひとには黙っていた私は、とてもどきどきしてしまった。どどどどうしてまた? と、とりあえず訊き役にまわってみる。
 傍から見てもひどいなあと思える進行につっこまれていたM嬢は、そうとう憔悴していて、
「私の年頃なら寿退社というのが角が立たないのはわかっているけれど、そんな予定はない。転職も目処は立っていないし、下手をすると職歴に穴を空けるかもしれない。それでも辞めたい」
 ……これを言うとき、どれだけ仕事に疲れているのかは、わかる。ほんの数ヶ月まえ、私が口走っていたことと、まったく同じ内容なんだもの。
 転職カミングアウト派のM嬢にSさん、「ふたりとも辞めるのはやめて」と翻意を促すIさん(ちゅうくらいの*1)、黙って耳を傾けるIさん(おっきいの)、そして私で三時間ほど転職談義。
 いずれ適切な折に退職の意思を表明するつもりだったので、私はその席では便乗カミングアウトはせずに立ち回ったつもりだけれど、どうだろう? 転職派のふたりの「転職先っていつ探し出すのがベストなの?」とか「リクナビNEXTリクルートエージェントの違いってなに?」とかいう疑問に、「転職したい日の二ヶ月からひと月半まえって聞きますよね」だの「雇用契約が成立したときのフィーがエージェントのほうが高くて、おなじ求人がどちらにも出ていたら、エージェントに出てる採用条件のほうが本気ベースらしいです」だの、すらすら答えてしまったので、よくても転職推進派と思われたか、まあ、勘のいいひとならなにがしか察するのに充分だったかもしれない。
 案の定、おっきいほうのIさんに「絹子は寿退社するつもりなんだよね?」と水を向けられてしまった。それとなく話題をそらしたら、「もっとも、絹子はふだんから『辞めたい、辞めたい』って口癖みたいに言ってるから、そういうやつは最後まで辞めないってみんな噂してるけどね!」と冗談めかした口調で、言われた。なんだそりゃ、君ら私にどうしてほしいんだ、と思って相手にしなかったけれど、いま書いてみて気づいた、これはべつのアプローチで探りを入れられていただけなのか! うっかり「私も辞めますよ」と口走るんじゃないかとかまをかけられていたのか!
 つねづね「辞めたい」と零していた人間が、ぴたりとそれを口にしなくなったら、「辞めたい」ではなく「辞める」にフェーズが移ったと考えるわね。そりゃあねー。
 怖いというか、うすら寒い話だ。
 そんなわけで、「株」の「か」の字も出ないような集会だった。殺伐。





 一年くらいまえの日記を読み返すと、仕事を辞めたくて辞めたくて、でもふんぎりがつかなくて、気の持ちようでこの苦しさは乗り越えられるんではないかと試行錯誤していたさまが書かれていて、いじらしかったなあ私、と思ってしまった。
 いまはもう、すっかり辞める気で落ち着いている。相変わらず仕事はきついけれど、精神的にはなんとか。
 でも、その落ち着きは、先日Iくんに、秋に寿退社OK、失業期間があってもOK、転職先はフルタイムでなくてもOK、と言ってもらえたおかげなのだ(そこまでハードルを下げられると、できるだけブランクなく転職しようという気が湧いてくるので、ふしぎ)。M嬢の吐露をきいて、この年頃の女子の転職について同じポイントでひっかかるのね、としみじみ思った。
 つぎの春は、もっとしあわせでいますように! 私も、M嬢も。みんなも。

*1:「Iさん」が多いので、身長で区別されている。ちなみにIくんは「ちっちゃいの」である