夏季休暇

 夏季休暇でした。
 夏休みはどこで過ごしていたんですか、と会社で訊かれたので、ちょいと実家に、と答えたら、まるで帰省したみたいなくちぶりですけど絹子さんの実家って会社から徒歩圏内じゃないですか、とつっこみをうける。
 いいじゃないのよう。大学も職場もひとり暮らしせぬまま通った首都圏っ子なので、あこがれのことばなのです、「実家」。
 実家では荷物の整理をした。なんせ二十数年分の堆積物だから処分しても処分しても終わりが見えない。雑誌はあらかたスクラップしたのだけれど、パリ特集のときの『クウネル』は雑誌全体がこの街について語る喜びに満ち満ちていてカッターを入れるのが忍びない感じ。小川洋子のインタヴューもあるし。
 その合間、ちょこちょこと蔵書を新居に運んだらIくんが24年組をおもしろいおもしろいといって読む。それなら、と高野文子を貸すと、「これはちっとも意味がわからない」。えええ。きみはなにかに激しく心を奪われて、しかしそれと訣別せねばならなかった経験はないのか、ブルジョワめ! どーん!(机をたたく音)
 まあいきなり『黄色い本』はハードルが高かったかな、『るきさん』あたりから始めればよかったな、と反省。
 そして『ポニョ』。
 そんな日々でした。
 でも私の人生にこの先、「夏季休暇」なんて期間が再び現れるのかしらともちらっと思うわ。