いきなり夏休み・弐

 Iくんが急遽おやすみをとれることになった。
(「夏季休暇を今月ちゅうにぜんぶ消化してね」って人事課にいわれたらしい)
 そんなことは二度目*1なので、慌てず騒がず小旅行。
 行き先は熱海。
 テーマは「なんにもしないをしよう」。
 移動手段も、新幹線だとか、踊り子号だとかに乗るとあまりにも旅っぽく晴れがましくていけないので、湘南新宿ライナー
グリーン車利用は可とする)
(しかしこれにより生まれて初めて湘南新宿ライナーの底力を思い知る。湘南新宿ライナーの真価は、一都二県以上を移動するときに発揮されるのだった。一都一県くらいの利用で「埼京線に毛が生えたもの」だなんて見くびっていると、罰が当たります)
 グリーン席で駅弁を食べたり、本を読んだりしているあいだに熱海着。
 私が六年余の社会人生活で得たスキルのなかで最も使い勝手があるものは、「宿泊施設の当たり外れがオンライン情報のみである程度わかる」ではないか?
 というくらい、ホームページを見て当日予約の電話をしたお宿がよかった。
 タクシーの運転手さんも太鼓判だったし、旧く、こぢんまりとしているけれど、よく手をいれていることがわかるところだった。お料理はおいしく、菅井ぎん似の仲居さんは甲斐甲斐しく、お風呂はすべて貸し切り。
 感激屋のIくんが、「ぼく、ここを定宿にしたい!」と口走るのを受け流しつつ、お互いの学生時代の熱海の思い出を暴露しあう。
 ……ふたりとも甘酸っぱくいろいろあったみたいよ。
 以前来たときは廃ホテルばかりでゴーストタウンのようだった海辺の道沿いに、「ラグジュアリーっていってね」と言いたげな外観のホテルが建っていたり、駅前からの坂道の干物やさんは変わらなかったり、ひさびさの熱海はほっつき歩くのが楽しいところ。
 なんといっても、温泉のほかはべつにさして名所旧跡がないのがさいこうだと思う。
 定宿をつくるほどじゃなくていいけれど、またいつか節目のときにきたらおもしろいかな。
 そんなことを思った夏の終わりでした。

*1:id:moony:20080705