びっくりしないサプライズ
Iくんはサプライズが好き。
なんの前触れもなくプレゼントを差し出して私を驚かせるのが好き。
(いちばんのサプライズは、去年の5月のある土曜日、「銀座のスパに行こうね」って言うから深く考えずについていったらザ・ペニンシュラの最上階フロアの部屋が予約されていて、薔薇の花束と婚約指輪を差し出されたことだ)
(その翌日、「じゃあこれから仕事に行くね!」と言われ、チェックアウト後にひとりで薔薇を抱えて帰ったのだってずいぶんなサプライズだった。プロポーズの帰り道に休日出勤……)
でもまあ。そんだけ好きだと事前にわかるわけですよ。固定の記念日などの前後には。なんていっても、切り出すその直前は目が泳いでるからさあ。
そういうわけで今回はiPod touchを差し出されたんだけれど、私の表情筋があまり動かなかったようで、
「ほしくないの? うれしくないの??」
と念を押されてしまった。
ほしいし、うれしいが、びっくりはしなかったなあと思ったけれど、咄嗟にピアノのアプリをインストールして、「これで一曲弾いて」とIくんに手渡し、即興の『Happy Birthday』。わーいわーいありがとう! と言ったらそれでやっと満足がいったようすだった。にこにこしていた。
サプライズ好きって、相手の反応が伴わないとためだから、貪欲な嗜好だと思った。
あと、うちにはそもそもほんとうのピアノがあるのに、なんでわざわざアプリをインストールしているんだ……とも思ったけれど、口は出さなかった。
そんなわけで、30歳になりました。私、自分はいつまでも20代だと思ってたわ。びっくりよ!
いまはiPod touchのビリヤードゲームに夢中です。