久世光彦『向田邦子との二十年 (ちくま文庫)』

 久世光彦の、新刊?! とびっくりして書店で見るなり買ったけれど、よくよく読んだら、どちらも持っている既刊『夢あたたかき―向田邦子との二十年 (講談社文庫)』と『触れもせで―向田邦子との二十年 (講談社文庫)』を一冊にまとめたものだった。

向田邦子との二十年 (ちくま文庫)

向田邦子との二十年 (ちくま文庫)

 ですよねえ。久世光彦だって、亡くなってもう丸三年だもの。
 ぱらぱらとページをめくって、それにしても久世さんの文章は字面だけでもそこはかとなくえろいなあと改めて思った。匂いや微熱や湿り気が、ひらがなのすきまからたちのぼってくるような。でも向田邦子に関する文章だけは、色っぽさを極力抑えているような生硬さがあって、少年めいていて、そこもまた好き。