『シェルブールの雨傘』
これも『ドゥミ×ルグラン=ミュージカル女優カトリーヌ・ドヌーヴ』。カトリーヌ・ドヌーヴは『ロシュフォールの恋人たち』ではメイクがたまにコープスブライドだったけれど、こちらではほんとうに美人。
えーと、でも私、この映画はあんまりわかりませんでした。だってヒロインのジュヌヴィエーヴ、17歳で妊娠しちゃうんだもん。恋人のギイが徴兵されているあいだに、宝石商と結婚しちゃうんだもん。避妊しようよ……とか、帰ってくるまで待てばいいのに……とか思っては、いや、フランスだし……戦場でギイが死んじゃうかもって怖かったのかもしれないし……フランスだもんね……と必死に理解しようとし、でも理解しようとしなきゃ理解できないのなら、よっぽど共感できないってことよね、という結論に落ち着きました。その、恋ゆえに心許ない、ふらふらした、翻弄されている姿を描きたかった映画なのかしら? そ、それならなんとか理解の範囲内。
ジュヌヴィエーヴのママが営んでいるのが傘店、という設定はけっこう好きで、オープニングの色とりどりの傘のパレードや、さいご、ギイとの意外な再会を果たすジュヌヴィエーヴが傘を持たず(ママが死んでしまった、というのが示唆的)降る雪を遮るものがないところはお気に入りです。
それにしても、再会したかつての恋人に「あなた、いましあわせ?」と訊く心理ってどんなものかしら。自分がしあわせなら訊かないよねこんなこと、と思うのですが。しあわせが欠如しているひとこそ、しあわせの在りや無しや(自分のものも、他人のものも)に敏感なのではないかなあ。ノンと訊いて安心したかったのか、それともウィというへんじをもらって罪悪感から逃れたかったのか。好きだったひとがしあわせなら私もしあわせ、というふうではないような雰囲気。考えさせられます。
この映画も衣装がすてきで、ことしのお洋服のテーマを「いままで持っていない色のカーディガンを買い足す」と設定している私には、ジュヌヴィエーヴやマドレーヌが着ているカーディガンの着こなしがとても参考になりました。それに、ジュヌヴィエーヴのコート! 有名なトレンチコートではなくて、カサールと初めてあったときの白いコートが、ママに付き添われた王女さまという感じ。
映画館の1階うえのカフェにこの映画をモチーフにしたブライスが展示されていて、こちらはトレンチコートのジュヌヴィエーヴ。ただ、髪の毛がぼさぼさのまま展示されていて、そんなふうにしか飾れないなら、いっそ飾らなければいいのに、と人形ファンとしては、いささか憤慨しました。
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