時間のうつろい

 ついでにうなじのお手入れもプロに頼んじゃえという気分になり、実家近くの床屋さんへ。子どものころ、髪を切ってもらいに通ったところで、理容師さんのおばさんひとりで切り盛りしているのです。
 お店に行ったら、ちょうど顔剃りの女性客で立て込んでいる最中でした。年配のお客さんが、孫といっしょにテレビを観ていると、さいきんは子ども向けでもひとが死ぬ番組ばっかりで殺伐としているわね、と零すと、理容師のおばさんが、昔は暴力的な番組っていってもウルトラマンくらいでしたもんね、とあいづち。
 そういえばおばさんは三人兄弟のお母さんで、昔は待合に息子さんたちのおもちゃのおさがりのウルトラマンの怪獣のソフビ人形が、子ども客用にたくさん置いてありました。上半身と下半身でわかれる構造だったので、上半身はバルタン星人で下半身はダダ星人のような、この世のものとは思えない姿にしてよく遊んだなあ。
 ウルトラマン、という語を懐かしげにうれしそうに話すおばさんの声を聞きながら、そんなことを思い出しました。そしておばさんがいつのまにかおばあさんになりつつあることに気づきました。
 さて、おばさんの手でひさびさにしてもらった顔剃りは、さすが剃刀を使うだけあってフェリエとは雲泥の差。瞼のうえの無駄な眉毛なんて、まるで最初から生えていなかったみたい。でも「あしたお呼ばれなんです」と伝えたら気合を入れて、やや懐かしい感のある細眉にされてしまいました。数年まえならよかったんだけど。時間のうつろいを幾重にも感じた日でした。