お弁当箱のよう

 旅行日記つづき。
 泊まった旅館は、客室がぜんぶで十数部屋の、こぢんまりとしたところでした。部屋それぞれに星にちなんだ名前がついていて、詩的な雰囲気でした。「月星」だとか「青眼星」だとか、あるいは「牽牛」、「織姫」だとか。そしてすべての部屋に露天風呂がついています。
 泊まったお部屋のお風呂は、こんな。


(湯船の蓋を閉めたまま写真をとったら、釜飯のお弁当箱のようになりました)
 街道から少し奥まったところにあるお宿だったので、とても静か。そして宿のなかでゆっくりすごすことを前提にしていて、宿泊者向けのライブラリーが充実していたり、夕食のあとにお夜食として軽食が用意されていたりしました。
 温泉旅館のお食事って、お膳のうえにお料理がどーんと並べられていて、お刺身を食べていると天婦羅が冷めちゃう、というところが多い印象があるですが、ここはひと皿ずつ合間を見計らって持ってきてくれるので、ひと皿ひと皿ゆっくりと楽しむことができました。
 予約時に苦手なものも確認してもらえたので、主人のは海老抜き、私のは茄子抜きの献立でしたが、食べ応え満点で、とてもおいしかったです。
 ただ、これは全く宿の所為ではないんだけれども、私の食べられない果物として、メロンと西瓜とキウイとさくらんぼと葡萄と梨と栗と柿とも回答したのですが、そういえばライチって書き忘れたわね……と、思っていたら、予感的中。デザートに添えられたフルーツはライチでした。あーあ。主人に食べてもらいました。
 どうして私の食べられない果物は、世の中ではいわゆるおもてなし系の果物なんだろう。ちょっと気張って食事に行ったときとか、どなたかのご好意でごちそうになるときとか、たいてい食べられない果物が現れて、泣きを見るのです。
(食べると死ぬわけじゃないので、目上の方におごってもらうときは、味わわないようにして嚥下します)
 これからは「食べられる果物は柑橘類とベリー類と桃とバナナとマンゴーだけです」と答えようかなあ、そのほうが喋る字数が少ないし。でもそれってなんだか、どんなデザートが出てくるかしらって想像する楽しみを放棄する感じ。