世界が嫉妬する

 先日、美容室で聞いた、おもしろい話。
 ことの発端はヘアアイロンでカールをつくってもらっている最中、美容師さんに「シャンプー変えましたよね?」とやや断定口調で言われたこと。おお、なぜわかる。「以前よりカールがつきづらいので……。きっと、シリコンが入っているシャンプーですよね。髪の毛のなかの水分が入るところにシリコンが入るから、手触りがつるつるになる代わりに、パーマやカラーが効きづらくなりますよ」
 で、ここからが、おもしろいなあ、と思いながら聞いた話の、本題。
 数年前。担当しているお客さんたちに、いつもと同じようにパーマやカールをしても結果が思ったとおりに出ない、ちゃんと効かない、というケースが、あるときを境に続出しだして、でもそういった変化のあったお客さんたち同士は年齢や職業もばらばらで、特に共通点というのも見当たらない。いったいどうして……とあれこれさぐりを入れているうちに行き着いた隠れ共通点というのが、当時大流行ちゅうで、のちに乱立するアジアンビューティー系シャンプーの嚆矢となった某社のシャンプーA!
「新発売のとき、成分にシリコンが入ってたんですよね〜。そこに気づくまでずいぶん首を捻りましたよ〜」
 と、美容師さんが言うんだけど、Aの開発者だって、「どうしてうちのを使っているひとがカラーやパーマをするの?」って首を捻りつつ成分変更したんじゃないの、それは……と、やや同情してしまったエピソードでした。黒髪ストレートが世界を嫉妬させる、っていうコンセプトのシャンプーなのに、カラーだのパーマだのって……。和食屋さんでこてこてフレンチを注文するお客のよう。
 効き目を減じるシャンプーをつかっているときにカラーやパーマをするとなると、強い液を使ったり、長い時間をかけたりと、髪に負担をかける方法をとらざるを得ないので、あんまりおすすめじゃないのだそうです。
 でも、私はカールなんてセットのときしか用がないし、カラーもパーマもしないからいまのシャンプー(Aではないです)でいいやあ、と内心で安心していたら、「シリコンシャンプーはドライヤーも効きづらくなりますからね! 熱風をあてる時間が増えるから痛みますよ!」と釘をさされて、確かにさいきんドライヤーにやたらと時間がかかっていたので、はっとしたり、しました。
 せっかく、シャンプージプシーの果てにやっと見つけた、

  • 刺激が強いシャンプーを使うと、髪を洗っているあいだに素手がかぶれる
  • でも効き目はしっかりほしい
  • バスルームにものを増やしたくないのでシャンプーは夫婦兼用。朝夜2回シャンプーする主人にケラスターゼを使わせるのは惜しい

 ……という、私のわがままな条件をクリアする、奇跡のシャンプーだったのになあ。また流浪の旅に出るしかないのかしら。