お洋服のいいところ

 十一月のうちは、コートといってもせいぜいトレンチくらいで、ウールやカシミアやダウンは師走になるまで着ないもん! というのが積年の意地であったわけですが、きょうばかりは、節を曲げました。ブラウスのうえにカーディガンを着て、さらにジャケットとコートを重ねたうえマフラーまでしているのに、それでも寒く感じるってどういうこと?! いまからこんなに寒くて、年が明けたらなにを着たらいいのよさ!! と、寒空の下、激昂したり、……あ、なかにババシャツを着ればいいのか……と自己解決してクールダウンしたりと、気ぜわしい日でした。
 ブラウスといえば、もうかれこれ十年くらい着ているコットンのブラウスが、とうとう、布が擦り切れて着られなくなってしまいました。下着のストラップの金具があたる部分の繊維が弱く薄くなっていたみたい。
 長年愛用したのにはわけがあって、立ち襟と袖口に綿レースのフリルがあしらわれたブラウスなんだけれど、見ごろや袖にはギャザーがないせいか、少女趣味に浸りきっていない、みょうに潔癖な雰囲気があって、ほかに代えられない独特なところが良かったのです。
 でも、十年も着ているし、もうお払い箱でもしょうがないか……と半ば諦めたのだけれど、この秋に買ったばかりのフェアアイルのカーディガンを着ようとして、そもそもこれは、あのブラウスに合うだろうと思って選んだんだった! と気づきました。ほかのブラウスやニットだと、どうにも合わないのです。そのほかにも、あのブラウスじゃないとしっくりこない……というお洋服が、絶望的なくらいに大量に、あれやこれやとクローゼットのなかに。さすが、十年選手。
 恋人と別れたばかりで休日は暇をかこっているので、公開前から気になっていた映画をひとりで映画館に観に行ったんだけど、そういえばこの映画って、別れるまえのデートで来た映画館で予告編を観て興味を惹かれたんだっけ……、と気づいて落ち込むような気分に襲われました。
 変わった素材でもないし、縫製の手順もかんたんそうなので、実物から型紙を起こしてレプリカをつくろうかなあと目論見ちゅう。そういうことができるのが、恋人と違って、お洋服のいいところ。