『きものがほしい!』

 群ようこの本を初めて読んだのは、中学生のとき。学校の図書室にあった編み物の本でした。その後、高校時代に森茉莉の評伝を読み、大学時代に椎名誠の自叙伝で再会し、そしていま、きものにまつわるエッセイを読んでいます。
 私は今後の人生であとなんど群ようこに出会うのだろうか。
(でも、あれだけ流行った『かもめ食堂』は観てないし読んでないんだよねー。このへんの配剤が、ふしぎ)

きものが欲しい! (角川文庫)

きものが欲しい! (角川文庫)

 初心者向けのふだん着系きものエッセイって、どの本もたいていが、

  • 単衣は六月からですが、さいきんは五月から着てもOKです(これはふだん着系でなくても書いてある)
  • 私はこんなに気負わずに横着にきものを着ています!(なぜか自慢げ)
  • こんなイベントに、こんな小物をコーディネートしてみました(「私ってばさりげなくおしゃれでしょ」)

 ……という内容で終始しちゃうので食傷ぎみなんだけど、この本は、呉服屋さんとの付き合い方や着付けのこと、ほかの本にはなかなか言及されていないウールや綿やポリエステルのきものについてなど、読み応えがありました。さすがだなあ。
 プラスチック素材の衿芯は、なんだか浮いちゃって、うまく使えなかったんだけれど、著者もそうで、なで肩には向いていない材質なのではないかと言及されていて、なるほど納得。
 とても勉強になったのは、このくだり。

 あるとき京都の大手メーカーの男性と話をしたことがある。(略)
 礼装ではない袷の着物の場合、雰囲気の違う着物を三枚。着物一枚につき帯三本ということで、全部で九本。そして帯一本に対して、小物を三組ずつ。つまり着物三枚、帯九本。帯揚げ、帯締めが各二十七本。
「実は一般の方だったら、これで充分、一生いけますねん」

 お店に行くと、つい、帯やきものにばかり目を惹かれちゃうんだけど、今後は重点的に小物を増やそう!! と思いました。