『カールじいさんの空飛ぶ家』

 追憶シーン中心に編集されたTVCMを観て、これはぜったい泣いちゃう映画だよねえと映画館に行くことを躊躇していたんだけど(「泣ける」系の映画や本は、苦手なのです。この年になると、べつに泣かそうとしてくれなくても、たいていのことが泣けるしなあ)、おそるおそる観に行って、案の定、開始十分で泣きました。しかし、そのあとは笑いありどきどきあり、良質の作品だったので、滂沱の涙でお化粧崩れちゃったらどうしようと逡巡しているひとは観に行くといいと思います。
 そんな躊躇いがちな私を後押ししたのは別ヴァージョンのCMで「ブッポウソウ! ブッポウソウ!」と鳥の鳴き真似していた男の子ラッセルのばかかわいさです。調べてみたら鳥のブッポウソウも、この鳴き声の真の持ち主だというコノハズクもアメリカにはいないそうなので、これは翻訳したひとのセンスがすばらしいということなのでしょうが、本編でもしっかりばかそうでかわいかったです。犬のダグを吹き替えした松本保典さんの「バウリンガルふうの機械を通しているからやや棒読みっぽくて、でもフレンドリーでばかそうなのはしっかり伝わる」という演技もすごかったです。プロのお仕事。もちろん、そのどれもこれも、CGアニメの動きのかわいさの上に成り立っているからこそなのですが。
 主役のカールじいさん(フレドリクセンさん、という呼び方のほうが、私は好き)は、子どものころは男まさりの女の子のまえでおどおどしているような子なのに、それなりに海千山千になっていたあたりが年月を感じさせました。
「空飛ぶ家」は、もちろん風船で空を飛んでいるときの絵も良いんだけど、テーブルマウンテンのうえに、カラフルなティーポットのようにちんまり佇んでいるところもかわいいと思いました。