『アバター』

アバター』を観に行きました。自宅でDVDで観るより、スクリーンで観たほうがおもしろそう、と、これだけ思わせる映画も珍しい。
 みんな同じことを考えたのか、3Dスクリーンは、公開からずいぶん経った平日の初回なのに、ほぼ満員で、びっくり!
 3Dというと、子どものころ幼児誌や学年誌のふろくにあった、赤青セロファンのメガネの飛び出し具合の印象が深いのですが、実際はもっと洗練されていて、自然でした。飛び出すというより、カルトナージュのようにいくつかの層があって、奥行きが感じられる、といったほうが正しいです。三時間も観ていると、3Dということを意識しなくなる……というか、逆に、2Dってどんなだったっけ? という気分になってきます。
 お話のほうは、じつに正統派なつくりで、『ポカホンタス』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』の「インディアン」を「衛星パンドラの先住民ナヴィ」に、「白人」を「地球人」にそのまま置き換えられます。あれはこうなるだろうなあ、と想像しているとほんとうにそうなるので、筋を追うのに苦労せず、映像を観るのに専念できます。
 なにが見どころだったかというと、やっぱり、パンドラの風景や生き物、それに二十二世紀の地球の科学技術、そしてアバターの存在じゃないかなあ。以前、「『アバター』はFFみたい」と書いたけれど、あー、うちの主人が『FF13』の11章でこんなモンスターに襲われていたなー、と思いました。あと、地球人の基地にある、「弧を描く透明なモニター」が、3D映像の魅力をすごく引き出していて、かつ未来っぽくて、すてきでした。
 ちょっと興味深かったのは、主人公のジェイクが下半身不随だということ。ナヴィ型のアバターは、地球人は酸素マスクなしにはいられないパンドラの地でも自由に行動するため、そして原住民たちと交流するために開発された遠隔操作できる生体マリオネットのようなものですが、ジェイクが自由に歩いたり走ったりできるのは、このアバターとリンクしているときだけなのです。アバターでの生活に飲めりこんで、シャワーもほとんど浴びず、リンクをきるのは食事をするときだけ、というのは、まるでオンラインゲームにのめりこんでいる現代人のようで、奇妙なリアリティがありました。
 あとナヴィの身長が人間の1.5倍という設定が、アバターの存在を不可欠にしていて、地味に効いていたと思います。
 映画館で観る映画って、楽しい! と再認識させる、職人芸のような映画でした。
 本編が始まるまえに流された予告編は、ティム・バートンジョニー・デップの『不思議の国のアリス』。これも3Dになっていて、こちらはまさしく飛び出す絵本のようでおもしろかったです。今後はどんどん3D映画が増えていくんでしょうか。