『アリス・イン・ワンダーランド』

 ティム・バートンで、ジョニー・デップで、「ふしぎの国のアリス」の映画化!
 この取り合わせで、期待するなっていうほうがむりだわ!!
 と、公開まえから、とても楽しみにしていた映画。ついに観てきました。
 しかし、あれ? 過剰に期待しすぎた?
 意外と、こぢんまりとした映画でした……。
 自分と同じフリークスふうの風貌の持ち主には意外とやさしい赤の女王とか、きよらかで慈悲深そうでいて、自分の手は汚さずにえげつないことをする白の女王とか、まったくの悪対善ではないのだけれど、でも基本は勧善懲悪のものがたり。「ふしぎの国」が舞台というには、違和感があるお話なのでした。赤の女王は「首をはねよ!」が口ぐせだけど、でもそれは彼女が悪人だからじゃなくて、そういうひとなんだからしょうがない、というのが原作の雰囲気だもんねえ。
 赤の女王配下の兵士たちのモチーフはトランプで、いっぽう白の女王の兵士たちはチェスの駒がモチーフだったり、赤の女王の城から白の女王の城へ向かう途中にまるでグラデーションのような桜並木があったり、赤の女王の城のなかにあるマッドハッターのアトリエなどは(彼を繋ぐ足枷もこみで!)、さすがティム・バートンと思わせる、目にも楽しいものだったので、ストーリーのあまりの単純さに、ちょっぴりがっかりしてしまいました。
(アリスの成長物語としてもやや、というかだいぶ唐突だった感じ)
 ところでこの映画って、あと数十年時間を経たときに、どんなふうに鑑賞されるんでしょう。アリスではなくマッドハッターがヒロインみたいな扱いであることは、やっぱり、説明が必要だと思うのよね。撮影当時、ジョニー・デップという俳優さんがとても人気だったので……と。
(先日、マイケル・ジャクソンの出た『ウィズ』を観たときに、古典文学が原作の映画は、あんまりアレンジしちゃうと、後年、制作当時の文脈の解説が必要になってたいへんだと思ったのです)
 おなじディズニー映画の『ネバーランド』でジェームス・バリを演じたみたいに、ジョニー・デップが原作者のルイス・キャロル役で、ちいさなアリスが迷い込んだワンダーランドのパートではマッドハッターを一人二役で演じるという映画でも私はぜんぜん構わなかったよ! むしろそれなら初回特典つきBDを買う! ……と思ったのですが、そんな映画、ティム・バートンが撮るわけないなー、というのも、わかっているのです。