『トイ・ストーリー3』

 映画の第三作目というのは、かなりの割合で「どうして作っちゃたんだろう……」と思わせる出来であることが多いという印象がありますが、この『トイ・ストーリー3』は、よかったです!
 前作から月日は流れ、『1』や『2』でおもちゃたちのよき友人であった少年アンディも十七歳。大学入学に伴う引っ越しのために、ずっと遊んでいなかったおもちゃを選り分けるよう母に言われます。大学(寮?)に持っていくものと、屋根裏部屋に仕舞うもの、そして保育園に寄付するものの、三つに。
『1』でヒロインだった羊飼い人形のボー・ピープが今回出番がないのは、すでによそのおうちに貰われて行ったからという設定が、なんともリアル。『2』で加入したカウガール人形のジェシーとヒロインのポジションがかぶっちゃうという大人の事情かとも深読みはできますが。そのほかのおなじみのおもちゃたち、ウッディやバズたちのあいだにも「大学組」と「屋根裏組」に分けられたという、いかんともしがたい立場の違いが生じていて、これがお話により妙味を添えているのでした。
 さて、新顔でいい味を出していたキャラクターのナンバーワンは、個人的にはケン人形です。サニーサイド保育園のちょうちょ組に、すてきなドールハウスを構えているケン。ハウスの一室にはバービーとケン用のお洋服がどっさりです。それなのになんで肝心のバービーがいないの? と考えてみれば、そりゃあ……元の持ち主にとってケンとハウスは「寄付組」で、バービーはそうじゃなかったんでしょ、という悲哀。登場シーンごとにびさりげなく衣装が違うのに、保育園のおもちゃたちはちっとも気づいてくれなかったり、あろうことか「バービーの付属品」扱いされちゃったり、もうやめてあげてぇ、と涙せずにはいられません。
 思えば『トイ・ストーリー』シリーズはつねに、子ども部屋のおもちゃ箱という、夢やおとぎの国に近しい場所の住人たちに、現実というものが襲いかかるお話でした。『1』での、まだ自分がおもちゃではなくスペース・レンジャーだと信じきっているバズが、自分のプラスティックの腕に刻まれた“made in Taiwan”の文字を見つけてしまうシーンの切なさは、忘れえないものです。『2』ではニューアクションベルト付きのバスが新発売されていて、型落ちになっているし、いっぽうウッディがプレミアムのついたレアなコレクターズアイテムだということが判明したり。そして今回の、アンディとの別れ。あの子どもだったアンディが大学生だなんて!! 前作、前々作とリアルタイムで観た身には、それだけでもぐっと来ます。この「ぐっ」はおそらく、前作から十年の時を経て今作が公開されたからで、『2』公開直後に『3』が作られたのでは嘘っぽくなる、ほんとうの時間の流れの重さによる味付けなのだと思います。
 と、リアルタイムでシリーズを追いかけた私は大満足でしたが、同行した主人は『1』も『2』も観たことがなかったにもかかわらず、すごくおもしろく感じたのだとか。「おもちゃとの別れ」というのは、だれしも経験した普遍的なことだから、受け入れやすいのかしら。私も、お人形数十体のうち、結婚したいまも手元に置いているのはそのうち一体だけ。ほかはすべて実家組なので、身につまされました。でも『3』から見たのじゃ、リトル・グリーン・メンがクレーンを見ると「神様〜」って寄っていってしまう伏線がわからないじゃないのよね!