音楽劇『ガラスの仮面〜二人のヘレン〜』

 初日を観てきました。
 あらためて言うまでもなく、あの『ガラスの仮面』の、舞台化作品です。
 月影先生が、夏木マリ! という神がかったキャスティングを期待して赴いたら、やっぱり、すさまじい再現度だったのですが、速水さんを演じた俳優さんの脚の長さもすごい少女漫画でした。あれを表現するなら三段ぶち抜きするしかない……。
 ほかにおもしろかったのは、青木麗役を男性が演じていたこと。オールメールシェイクスピアで娘役を演じる俳優さんなのだそうです。一見するとまるで宝塚の男役のよう。男装の麗人を演じる男性、という凝ったキャスティングでした。桜小路くん役は出番が少ないわ、出てきても歌がお粗末だわで(『劇団オンディーヌ』は歌のレッスンしないの?!)、この顔ぶれなら、もうマヤを巡って争うのは速水さんと麗ちゃんでいいよ! と思いました。
 しかし、漫画だからいままで気付かなかったけれど、青年実業家が高校生の女の子を「おチビちゃん」と呼んでいるさまというのはあれですね、すごい破壊力がありますね。ヘレン・ケラー役の稽古で、紫のバラの人の別荘で耳に粘土を詰め目隠しして過ごすマヤのもとを真澄さんがこっそり訪ねるシーンなども、生身のひとが演じると、だいぶ犯罪めいていて、観ているだけのこちらさえうわあああと叫びだしたくなるような、猛烈な恥ずかしさに襲われました。
 少女漫画は、ページのうえと、少女(元少女とか旧少女とか含む)の心のなかにだけ、留めておくのが正解なのかしら……。
 演出は蜷川幸雄。舞台上だけでなく観客席でもお芝居を繰り広げる演出で、劇中劇の多いお話をおもしろく見せていました。アカデミー賞授賞式は、舞台と客席をまるまる使用。月影先生がマヤと亜弓さんを『紅天女』候補にと宣言したあの場に、自分も居合わせたような錯覚に陥って、お芝居ってすごい! そりゃあマヤも亜弓さんも月影先生も命を燃やすよね!! と納得したりしました。
 マヤのお母さんの病気も描いていたし、ぜひ続編をつくってほしいような、しかしお話が進んで紫織さんが登場したら、そうとう胃が痛くなりそうだわとか、複雑なきもちです……。