ヴェネツィアで得た教訓
「アドリア海ですよ!」
ミラノからバスで四時間余り、座席でうたたねしていると添乗員さんの声がして、皆が跳ね起きる気配がしました。
車窓の外をのぞくと、海。
ヴェネツィア!! 今回の旅の、個人的にはメインの街です。
このときのはしゃいだ気持ちは、いま振り返ってみても、ことばで表せません。自動車で訪れるヴェネツィアは、まず巨大な駐車場でバスを降りて、アーチ状の橋を昇りきると、運河とその岸に浮かぶ街、写真や映画のなかで観たあの景色が現れるという、視界への出現の仕方がまず、憎たらしいほどドラマティック。
本島のホテルにチェックインしたあと、荷ほどきもそこそこに、街歩き。夕食の時間ぎりぎりまで彷徨いました。
街のあちらこちらで月のモチーフが目についたのは、やはり、潮の満ち引きと密接に関わりのある街だからなのかしらねえ。
夕食の席では、ツアーでいっしょの新婚さん(ほんもの)のYさんご夫妻とワインをシェアしました。ヴェネツィアは街歩きのやめどきの判断がつかない、歩いても歩いても景色がすてきすぎる……という点で合意を得ました。
そのあとさらに夜の街を歩きまわり、運河の水面を眺めたり、オープンテラスの席でスイーツを食べながら道をゆくひとを眺めたり、しました。流しのアコーディオン弾きや花売り、辻でへたくそなタップダンスを披露する男女二人組、売り物の光るおもちゃを夜空に投げて気を惹く移民らしき人びと、ラジオの曲にあわせて踊りながら果物をカットするフレッシュジュースの屋台の売り子、様々なことばをしゃべる観光客たち。ヴェネツィアはカーニヴァルの季節が有名だというけれど、いまこのときだってまるでお祭りの夜のようだなあ、「今宵会う人皆美しき」と与謝野晶子がうたった桜月夜の祇園はこんなだったかしら、と思いました。
おしまい。
……。
……と、ここで終わればうつくしいのですが。
このあと、ホテルの部屋のバスルームの水が溢れてしまうというトラブルが発生。主人がぽつりとこぼしたことには、「台湾の占いで『近々、水難に遇う相が出ている』って言われたけれど、このことなのかな……」。
あー。あれー? そういえば、たしかに、春の台湾旅行の際、そんなことを言われたけれども、「水難って、我が家は海無し県だし。一体??」とピンとこなかったので、すっかり忘れていました。
ヴェネツィアで得た教訓は「台湾の占いは、あたる」です。グローバルすぎる!