ガイドブックは帰国便の機内で読むな

 とうとう、イタリア最終日です。お昼過ぎのフライトなので、午前ちゅうはローマ市内をぶらぶら。
 途中、街でYさん夫妻とすれ違いました。奥様のほうが「イケメン神父カレンダーを買いに行くんです!」とはりきっていた。あれはローマおみやげの定番なのですね。私も駅のキオスクで買いました! 2011年版では9月の神父さんがいちばんいい男です!!
(しかしなかにはイケメンの定義における地域性による差異、みたいなものを感じさせる神父さまもいます)
 空港の売店にて、あまったユーロを使いきるため、ローマの歴史的なモニュメントや芸術品のガイドブックを買い、離陸までのあいだ、機内で読んでいました。
 それでホテルの周辺や立ち寄ったさきのページなどを眺めていたら、あら、なんだか見たことがある、しかし今回の旅では見ていない彫像の写真が載っている……ベルニーニの『聖テレジアの法悦』!! サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会って、ホテルのすぐちかく! というか街あるきの際にまえを通りかかって、「ローマって教会ばっかりだなあ」と思った、あそこがどうもそこだったっぽい!
 いますぐ私を飛行機から降ろして!! と思ったけれど、そんなことは当然、むり。これほどのニアミス、とはいっても、一方的に思い入れのある好きな彫像と壁いちまい隔てた距離まで近づいて、そのまま通り過ぎたということだけれど、人生で初めてでした。そして、それと地続きのところにいるのに、もう観に戻れないなんて。
「下調べをしない旅」なんて気取っていたのが裏目に出たというか、ガイドブックは帰国便の機内で読むなという新しい教訓を得たというか、なんとも放心してしまう事態でした。
 いいの、またいつかローマに行くから。ローマは街じたいが巨大な美術館のようなところだった。こんどは事前に調べ尽くして、ベルニーニ鑑賞ツアーとか、古代ローマの遺跡巡りとか、個人で見てまわるの。青の洞窟にも再挑戦する。ついでにヴェネツィアにも行く。捲土重来です。心残りを抱えて去るほうが、旅先はうつくしく胸に残るのです。たぶん。