二月の雪とチョコレート

 二月の雪、それも積もるほどの雪なんて、このあたりでは珍しい気がする。「ホワイト・ヴァレンタイン」と呟いてみても、「なんだか初めて呟いた感触ですよ……」と舌が主張するので、やっぱり、そうなんだと思う。
 で、その記憶が正しいか、確かめようと過去の日記を読もうとしたのですが、例年、冬は活動が低下する生き物ですので、二月のログがまともに残っていませんでした。わはは。
(この日記をアップしているのだって、すでに三月なのです。「遅延」なだけで、「欠航」でないだけ、まし。といった感じ……)
 いまの住まいに引っ越してから初めての本格的な積雪なので、じつは、ものすごく楽しみでした。なにせ、近くに公園があって、子どもたちの遊び声がしょっちゅう聞こえて楽しげなのが、この家の購入の決め手。雪が積もったら、さぞかし賑やかなんだろうなあとわくわくしていたわけですよ。
 が、実際には、しわぶきふとつ聞こえない静けさ。様子をうかがってみると、午前ちゅうの早い時間に、雪があらかた融けてしまって、一面のぬかるみと化していました。日当たり、そんなによかったのね……。まあ、ここらの「本格的な積雪」なんて、そんなもの。というわけで、子どもはおろか、ベンチでいつも日向ぼっこしているお年寄りの姿も見えません。ただ、ちいさな赤ちゃんを抱えたお母さんだけが、散歩に来てみてはいいけれど、どうしようこのぬかるみ……という風情で、公園に足を踏み入れかねて佇んでいるだけでした。
 いっぽう、花壇の茂みのあたりだの、塀の陰だのには雪が残っているので、いつもはそのあたりを人知れず移動している猫たちが、行き場を失って、しかたなく往来の轍をとぼとぼ歩いているのも、印象的でした。あんなにも目立っているのに、それでいて所在なげな姿なんて、人間のだって見たことないわ!
 二月の雪は、みんなの居場所を失わせます。
 ちなみにことしのチョコレートは、自分へは定番のデメルオレンジピールチョコレート。主人へは、フィリップ・ベルのアソートでした。来年の自分のために、記録しておきます。