『ZED』

 サーカスが好きです。
 子どものころ、リングリングサーカスや、ジークフリード&ロイ(こちらはサーカスというかマジック)に連れていってもらった、すりこみのせいです。
 が、主人は動物の臭いが嫌いで厭、と反対するので、じゃあ人間しかでてこないサーカスなら良いのね?! ……という流れで、シルク・ドゥ・ソレイユの『ZED』に行ってきました。
 お席は、四列目のど真ん中! 私、一生分のチケット運をここで使いきったのでは……と諦観してしまう、よいところ。ステージのいちばんまえに立つ出演者と、ちょうど目が合う高さなんですよ。
 道化に空中ブランコや綱渡り、トランポリン、ジャグリング、人間ピラミッドと、ことばにしてしまうとありふれた響きなんだけれど、いままで観たサーカスと比べると、一段も二段も段違いでした。見せられる技のなにもかもが圧倒的ですごすぎて、途中から、どこからがすごいのか、よくわからなくなったくらい。時折、演者がどや顔で静止して見得を切るので、それでやっと「あっ、いまのはふつうの人体にはむりな動きだ」と、思い出す仕組みでした。
 天井から垂れさがるリボンや、まわる舞台の床など、大掛かりな道具立てなのに、いちばんの目玉として扱われている演目が、道具もなにも使わず、ひとの身体能力だけで信じられないポージングを繰り広げるハンド・トゥ・ハンドなのが、なにか象徴的。
 http://www.zed.co.jp/about_show/story_13_1.html
 しかし、サーカスの魅力って、うつくしいけれど、正しさとは無縁なところですよね。フィギュアスケートだって新体操だって、女の子がひらひらしたり体にぴったりした衣装を身に纏ってすごい技を繰り出すけれど、やっぱりサーカスとは違う。あちらはスポーツで、こちらは見世物。前時代的ないかがわしさを孕んで。
 と、赤い小鳥と青い小鳥のようなお姉さんふたりの演目を観て、思ったのでした。
 http://www.zed.co.jp/about_show/story_11_1.html
 孫悟空みたいな主人公ZEDや、『ライオンキング』にこんなキャラクターいたなあ、といった感じのシャーマンや、RPGのラスボスのような歌姫など、ショーの部分を担う登場人物たちにいつもどこか既視感がつきまとうのが、ちょっと残念な感じ。
 でも、シルク・ドゥ・ソレイユのほかの催し、『クーザ』なども観てみたいなあと思いました。『ZED』はあきらかに大人向きで、恐ろしげなシーンでは客席で子どもの泣き声がしたけれど、公式サイト(http://www.fujitv.co.jp/events/kooza/)のキャラクター紹介を見るかぎり、『クーザ』はわりと子ども向けなのかしらね。