穂村弘という幻想の共有
ひさびさにほむほむウィーク。
- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/02/04
- メディア: 文庫
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とくに第六章「短歌と〈私〉」。短歌も、俳句も、川柳も鑑賞するのは好きだけれど、将来的にもしなにかひとつにチャレンジするなら俳句だなあ、というか、短歌を自分がつくれる気がしない、とぼんやり考えていたことの答えを、これを読んで得たような気がした(大学時代に講義で詠んだことがあるけれど、それはいちどだけだったし、この場合「つくる」というのは、複数回にわたって、ということでしょう)。十七文字の俳句や川柳とは違う、三十一文字ある短歌は、作歌した本人でもコントロールできないものを晒すような、新しい生き物が同時に産み出されてしまうような、なにか畏れに似たイメージがあるなあ、ということを再認識。
- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/03/18
- メディア: 単行本
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ところで私、一首の短歌についてほめるときの、「この一首は○○という語の部分が秀逸。○○が違って、例えば××だったら、あたりまえすぎてつまらないでしょう?」と改悪例として繰り出されることばの、形としては整っているし、ありがちなのに、たしかに短歌としてつまんない出来になっている……というのを読むのが好きです。
- 作者: 穂村弘
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/12/21
- メディア: 文庫
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穂村弘はひとりだけなのに、読んでいて楽しいコメントも、ひりひりする歌論も、この人だめすぎて目が離せない……! と思うエッセイも、ぜんぶ印象が違っていて、なんだかひとりのひとに思えない。自分のイメージの露出にものすごく長けているひとなのかしら。穂村弘のエッセイを読むというのは、作者と読者のあいだでその幻想の「ほむほむ」を共有するようなものなのかも、と思いました。
「ふたりきりになると、突然、幼児化する男性がいて驚くんです」と彼女は云った。
内心、ぎくっとしながら、さり気なく訊いてみる。
「それって、やっぱりまずいですか」
「え? だって幼児プレイですよ。馬鹿馬鹿しくて、恥ずかしくて、そんなものにとってもつきあえませんよ」
きっぱりそう云われて怯んだが、おそるおそる申告してみる。
「あの、僕、割と、幼児化するんです」
「え、ああ」と云って、彼女はちょっと目を逸らした。
「それは、でも、まあ、ほむらさんは、ねえ」となんだか解らないフォローだ。
「ええ、まあ」と私も頷いておく。
「ほむらさんは、ねえ」と言われてしまううえに、「ええ、まあ」と頷いてしまうほむほむが、あまりにもほむほむらしくて、うううん、と唸ってしまった一節。