『パウル・クレー おわらないアトリエ』

 東京国立近代美術館へ行ってきました。おめあては、パウル・クレーの展覧会です。
 http://klee.exhn.jp/
 クレーの作品には、学生時代、講義のスライドでいちど観ただけの、印象的な一枚があります。以来、画集などをあたってみたものの、クレーは多作なので、似ている作品は載っていても、それ自体は見当たらず。今回の展示はずいぶん作品数が多いそうなので、だいぶ期待しました。
 が、結論として、展示作品のなかに、件の作品は見当たりませんでした。もしも展示されていたら、もしももしも絵葉書が売られていたら、ぜったい買おう! と意気込んでいたので、がっかりもひとしお。
 展覧会に行く楽しみは、もちろんオリジナルを間近に観られるということもそうだけれど、個人的には、お気に入りの作品の絵葉書を購入することです。絵葉書ってだいたいおんなじサイズだから、ちがう展覧会のものでもいっしょに綴ると好きな作品百パーセントの画集みたいになるでしょ。
 ……とまあ、かってに期待してかってに落胆していたけれど、展覧会自体はたいへんおもしろかったです。展覧会タイトルにあるように「アトリエ」にフィーチャーした内容で、クレーの歴代のアトリエごとに作品がまとめてあって、あいまには、あの多作のクレーが手放さずそばに置いたという「特別クラス」の作品群。さいごの大きな展示室には、うえから見ると思い思いの角度も持つ多角形のかたちに配された展示壁が点在していて、一見するとまるで迷路なんだけれど、じっさいに作品を鑑賞してみるとふしぎに順路通りに辿れるという仕組み。この多角形の壁が、それぞれ色分けされていて、俯瞰するとクレーの作品みたいに見えるようにという意図をもって配置されただろうことが伝わってきます。展示室のテーマが、クレーが試したさまざまな技法についてなので、そういった試みがじつにふさわしいような気がしました。
 夏休みなうえに、会期最終週だったせいか、すごい人出で、あんまりじっくりと観られなかったのが、心残り。
 その代わりといってはなんですが、常設展も観てきました。東京国立近代美術館は、黒檀の、拍子切りのような細長い木片を敷き詰めた床がすてき。そして常設展のほうにもクレーの作品が数点展示されてありました。これらを企画展に起用しなかった理由はどうしてなんだろう……「特別クラス」ではなかったから?
 クレーのほかにカンディンスキーや、岸田劉生の麗子像(五歳ヴァージョン)も観られて、楽しかったです。
 東京国立近代美術館は、工芸館も行ってみたいんだけれど、駅から工芸館へ歩く途中に日光による熱で消滅してしまいそうなので、涼しくなってからかなあ。