『カーズ2』/『ハワイアン・バケーション』

カーズ2』に行ってきました。
 当初は「映画館で観なくても、BDで観ればいいかなあ」と、夫婦でなんとなく認識が一致していたのですが、同時上映の短編は『トイ・ストーリー』のスピンオフというTVCMを目撃した瞬間、居間になにか電撃のようなものが走り、
「行こう」
「行こう」
 そういうことになったのです。
カーズ2』本編前に『トイ・ストーリー/ハワイアン・バケーション』。『トイ・ストーリー3』(これ、もう一年まえの作品なのか……)で

新顔でいい味を出していたキャラクターのナンバーワンは、個人的にはケン人形です。

 と感想を綴った(id:moony:20100808#p1)、あのケンが主役です。おおお、CMを観たとき感じた「なんだかおもしろそうな匂いがする」という予感は、外れてなかった!
 あいかわらず衣装持ちで、シーンごとにお着替えをしているケン。着せ替え人形という自分の属性をつねに体現している点では、ケンはいちばんおもちゃらしいのよねー、結果的にはなにか違うふうにできあがっているけれど……。おしゃれ男子キャラって米国の映画ではゲイっぽく描かれることが多いのに、ケンにはバービーがいるから回避されているのはおもしろいなあと思います。
 そのバービーも、初代バービーの白黒ストライプの水着を着ていて、マニア対策はばっちりでした。
 おもちゃのカメラで「カシャッ」と口で擬音をいいながら、ケンたちの写真を撮ってあげる仲間のおもちゃたちのやさしさも、よかったです。もちろん、実際には写真は撮れないけれど、写真って、撮ったものより、撮ることそのもののほうがたいせつ、というところがあるよね。
 さて、本編の『カーズ2』。若造レーサー・マックィーンの自分探し映画だった前作とはがらりと変わって、レース映画でスパイ映画です。
 今回新登場のキャラクター、ジェームズ・ボンド役にしてボンドカーの役割もこなすフィン・マックミサイルが、擬人化された自動車たちの『カーズ』世界の真骨頂といった感じで、最高。
 また、何カ国も転戦する国際レースの、各都市の描き方がすてきでした。アジアで近未来な東京とか、まるでファンタジー世界のようにうつくしいイタリアとか(ローマ法王専用ベンツに、これまた車化された法王猊下が乗っていたのがツボでした)。パリはいまひとつだったけれど、ロンドンは、これほんとにCG? 実写じゃない? という緻密さ。
 マックィーンとレッカー車のメーターは、田舎町にいるあいだは楽しく遊べる親友同士なのに、都会に出てくると、メーターのこどもっぽくて洗練されていないところがマックィーンははずかしくなっちゃう……。そういうことって、友達関係じゃなくても、親子とか兄弟とかであるよねえ、となんだかリアルでした。その、自分の場慣れていない過去の振る舞いを思い出してメーターが落ち込むシーンとか、『カーズ』って、観ていてこう、心の底にしまいこんで蓋をしていた、「なかったこと」にしたはずの記憶をちくちく刺激される映画です。まあ第一作の冒頭が、主人公がレースまえに「おれは速い、速い」って自己暗示的に精神統一するところから始まる、非常にメンタルな作品だものね。人間のキャラクターが演じていたら重くなりすぎるテーマを、車たちが演じることで軽やかにできているのかもしれません。