『またまたサザエさんをさがして』

サザエさんをさがして』シリーズの既刊を、読み終えたよー。
 このシリーズ、タイトルをならべると、

 各タイトル、とくに三巻以降からたちのぼる不協和音というか、統制のとれなさ具合、いきあたりばったり感がすごいと思います。ひと言でいうと、うつくしくない。
 その三巻では、「インスタントラーメン」の回がおもしろかったです。紹介されているのはペルーの日本大使公邸がゲリラに占拠された際、人質となっていた一等書記官が目撃した、若い女性ゲリラのエピソード。赤十字の差し入れのなかにあったインスタントラーメンを、生まれてはじめて口にして「こんなおいしいもの食べたことがない、家族にも食べさせたい」と、手投げ弾を入れていたリュックにカップ麺を入るだけ詰め込んだ、とか。よく考えるとサザエさんとはぜんぜん関係ない、昭和のできごとですらない。でも、はじめてインスタントラーメンを食べたとき、昭和のひとたちもこんなふうに感激したのかな、と思わせます。
 四巻では、「三本立て」の回の、日本では最盛期の映画人口は年間十一億人超で、国民全員が年に十二回以上映画館に行った計算になる、という数字が興味深かったです。そのころの映画って、現在の映画とは違う、むしろTVに近いような存在だったのかしら。
 と、サザエさんの登場人物とは直接関連がないところにばかり感心しましたが(『磯野家の謎』のような趣旨の本ではないので、あたりまえなのだけれど)、五巻における「パジャマ」の回の、「カツオの運動会のためにはりきってミキサーでミックスジュースをつくるときや、クリスマスのときなど、頑固おやじではなく『パパ』を演じるときに波平さんはパジャマを着る」と、漫画の演出のお話としてくだりなどもたまに現れて、おおっと目をひきます。
 全体を通してとくに印象に残っている点は、読んでいて、おもしろいなあ! と感じる回は、文末の執筆者名を確かめると、たいてい伊藤千尋さんだったことです。逆に、うーん……?? と首を捻っちゃう回は、ほぼ保科龍朗さん。こんなふうにフォーマットがある程度きまったコラムの連載でも、執筆者によってカラーといったものがはっきりと浮かびあがってしまうんですね。チームによる仕事の恐ろしさのようなものを垣間見ました。

またまたサザエさんをさがして

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サザエさん パンダを見に行く サザエさんをさがして その4

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原っぱで夕焼けを見ていた頃 サザエさんをさがして その5

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