『インクレディブル・ハルク』

『アヴェンジャーズ』の予習に観る作品も、いよいよ、残すところあとひとつとなりました。

 エドワード・ノートン演じる主人公のブルース・バナーは、特殊な薬品の効力によって、心拍数が上昇すると緑色の巨人「ハルク」に変身してしまう。軍に追われ、国外に潜伏していたブルース。ハルク捕獲作戦に軍が投じたのはティム・ロス演じる精鋭。そこにリヴ・タイラー演じるブルースのかつての恋人や、その父である軍高官、リヴの今彼、さらにブルースの協力者などおおむね三十代以上の人物たちが協力したり敵対したりというおはなしです。
「緑色の巨人があばれまわる」という荒唐無稽な設定なのに登場人物がみんな中年以上で、研究者だったり大学の教員だったりあるいは軍人だったり、いわゆるおとな、というのがすごくふしぎな雰囲気でした。こういうのはなんとなく、若さと勢いでどーんとやる、という先入観があったよ! 心拍数の上昇が変身の要因、というあたりもミソで、不用意に変身しないように、治安が悪い場所を避けたり、元恋人と盛り上がっても行為に及べなかったりするのです。ドラマ部分はすごくおとなっぽいのに、アクション部分は緑の巨人というギャップが妙な味わい。
 ハルクは化け物みたいな見た目だけど、ふだんのブルースは物静かで理知的でした。このひとが『アヴェンジャーズ』ではセレブのおっさんとか異世界の筋肉王子さまとかロマノフ王朝の末裔とやっていかなくちゃいけないなんて、心労が目に見えるようでいまから不憫すぎる、と思ったくらいです。べつに戦わないでも、このひとたちとからむだけで心拍数はふつうに上がるよ……。
 あと、個人的にはブルースといえばブルース・ウェインなので、映画のなかでだれかが「ブルース」と口にするたび、バットマンまで出てきちゃうのかと勘違いしてドキッ! となるという現象もありました。全体的に、ふしぎな感触の映画だったなあ。