デヴュー
家族3人で子育て支援センターへ。
こういう、子どもを遊ばせるための施設は、存在は認識していたけれど、なかなか、ひとり(プラス娘)で訪れる勇気がわかなかったので、この日まで利用していませんでした。
なぜかといえば。きっと、私とは大違いの、すてきなお母さんとその赤ちゃんでいっぱいなんだわ……と想像していたのです。お母さんは、巻き髪で、メイクもネイルもばっちりで、シフォンかチュールのスカートを穿いていて、二十代。赤ちゃんは、セパレートのおしゃれなベビー服。
そこへ行くと私なんかパーマかけたの半年まえだし、娘の服なんか思いきりつなぎの服だし……。
と、尻込みしていたのだけれど、この日たまたま主人が代休だったので、行ってみることに。「装備:イクメンの夫」だったら、防御力がちっとばかり上がるんじゃないか、という、いやらしーいことを考えたのです。
(夫は装備品っていうより召喚獣じゃないかな)
(イクメンの奥さんは美容室に行くブランクを半年もあけないよ、ということは私の髪の毛がよく知っています)
そしてついに支援センターに足を踏み入れたのですが、私の想像したようなお母さんなんて、ほぼ皆無でした。みんなみんな、三十代で、ショートカットかボブかひっつめで、ナチュラルメイク+メガネ+マスクで、お召し物は長袖Tシャツにデニムでした。なんという親近感。
いままで私はいったいなにと戦っていたんだろう……たぶん、子育て雑誌とベビーグッズのカタログのモデルさんの写真、あるいは日本のどこかにだけ棲息する、まぼろしの生き物。きっと、このへんにはいないの。
ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ!!
(想像上のみに存在する敵に対するときの呪文です)
支援センターを利用するための申請書類には、子どもと、その同伴者の続柄の欄に、
- 母
- 父
- 祖母
- 祖父
- ベビーシッター
と選択肢があって、
「ベビーシッター!! 漫画の世界だ!」
と思いました。
- 作者: 伊藤理佐
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「おおおおう」
となりました。
うちの娘、まだ、寝返りとおすわりと、「はいはい…? の、ようなもの」しかできないし。
驚きをうまく呑みこめずにいると、主人が、娘を抱っこした状態で、月齢のちかい、活発な子たちのいる方向を向いていたので、
「なにしているの?」
と訊くと、
「娘ちゃんに、はいはいとはどういうものか、見学させているの」
という返事。
「おお!! つまり彼女のなかにはいはいのイメージを!?」
「そう! 我が家にはほかにはいはいするひとがいないからロールモデルをだね!」
と夫婦で盛り上がっていたら、ほかのお母さんに忍び笑いされました。
茶の間のノリを公共の場に持ち込むのはやめよう、と思いました。はずかしかった……。
親の思惑はともかく、娘自身は、キーボードをでたらめに弾いたり、ロディに乗ったり、生まれて初めてのすべり台を経験したりと、実り多き日だったようです。
そんなに怖いところじゃないってわかったから、これからはひとり(プラス娘)で支援センターに行ってみるぞー。
行ってみたいぞー。
……行くんじゃないかな、たぶん……。