食べものと、年齢のはなし

 ことしのバースディケーキは、千疋屋総本店のフルーツタルトでした。
 ものすごくおいしかった。とくに、宝石みたいにつやつやで、ぷりぷりのフランボワーズが。
 どれくらいおいしかったかというと、食べている最中に、
「あっ! これは、私のなかの『おいしかったランキング』、《フランボワーズ部門》が、たったいま! 第1位が更新されていて、しかも一生ランクダウンしそうにない!!」
 と、わかったくらい。
 私はたいてい、食べ物を食べているまっ最中は味の評価ができなくて、ひと皿の大半を消化したころにじわじわと「おいしいなあ」という気持ちが染み出してくるので、この即効性はすさまじいインパクトでした。こんなにすばやく、ひと口で「第1位!!」と感じたのは、ローマでの《カルボナーラ部門》以来だなあ……。
 さすが、老舗のフルーツタルト。
 たしか、去年のバースディケーキも、やっぱりフランボワーズがのっていて、チョコ飾りや飴細工も繊細で総合的においしかったんだけれど、お店の名まえを失念してしまって、再リクエストできなかったのです。憶えているのは、
「ヨーロッパに本店があって、日本では新宿か、池袋のどこかの百貨店でしか買えないケーキ屋さん」
 という、地名がたくさん入っているわりに、ずいぶんあやふやな情報だけなのでした。そんなのたくさん該当しそうで、ちっとも絞り込めない。「国道17号沿いにあるファミレスのチェーン店」なみに、なにも言ってないのといっしょ、の文言だと思うの。
 さて、三十歳を超えてからこちら、自分の正確な年齢はつねに忘れがちでした。
 三十二歳も三十三歳も実感としてはたいしてかわらないし、年下の夫であるところの主人がいつもいつも、
「絹子は三十八歳だもんね〜」
 と、実際より微妙に多い年齢を言うという、それ、オフィスでやったら即セクハラホットラインものだよ……といいたくなるような、しみったれたいやがらせを、じつにこまめにするので、呆れて、ハイハイ三十八歳さんじゅうはっさい、とあしらっていたら、自分の正確な年齢がわからなくなったでのすね。
 で・も! これからの1年は私、自分の年齢を忘れないと思うわ! 三十五歳!!
 なぜかというと、たまたまこの日、とある子育てSNSに登録したところですね、入力した生年月日に従ってプロフィールの年代欄が自動的に表示されるのだけれど、私のプロフィールのそこに、
「三十代後半」
 と表示されたのです。
 三十代はともかく、後半か〜!
 た、たしかに! 正しい!!
 人生マラソンの折り返しコーンが見えてきた、って感じ!
 それでなにかいたく感動してしまい、
「きいてー! 私、三十五歳だから、三十代後半なのよ! アラフォーよ!」
 と報告したところ、主人は、ああ……うん……と口ごもってしまい、以降、件の「さんじゅうはっさいよばわり」がピタリとやんだので、ほんとうにいやがらせだったんだなあ……と確信したのでした。
(しかしながら、ミドルサーティーはアラフォーなのだろうか。二十五歳のお嬢さんに「わたしアラサーなんですう」と発言されたら、ほっぺをつねりたくなってしまうわ)
 以上、食べものと、年齢のはなしでした。
 た、誕生日エントリってこれからの一年の抱負とかを記すのでは……?! と、いま気づいた。が、ま、いっか。