総合的にいうと、愛い奴

 公園に遊びに行っても、まだ歩けないので、よそのおともだちが遊びまわるさまをベビーカーから見学するしかない娘をかわいそうに思って、これなら多少おもしろかろうとシャボン玉マシン(手動)を導入してみたら、娘本人はたいして興味をふかれたふうもなく。ただ母がよその2歳児ホイホイと化しただけでした。マシンを触りたくて距離ゼロになる2歳児、シャボンの補充ボトルを見つけてしまう2歳児。さすが0歳児とは違う。しかし目に毒なものを見せつけてしまったようで、たいへんに気まずいのです……。
(なぜ2歳とわかったかといえば、その気まずさを紛らわすための話題が「何歳ですか?」しかなく、そしてホイホイしてしまった子らのすべての親御さんに訊いたからです)
 そのうちひとりのお母さんに、
「まだ歩けない子は小学校の学童ルームに行くといいわよ。午前ちゅうの、小学生が授業を受けているあいだは未就園児に解放されているのよ」
 と教えてもらって、小学校へ行ってきました。
 先日家族で行った支援センターみたいなものかな? と予想していたら、違った。
 支援センターは各々親子がかってに遊んでいて、たまに自然発祥的に親同士で会話が発生する、といった状態だったけれど、学童ルームでは常駐の職員さんが積極的に保護者同士の仲をとりもって、
「みなさーん! ママ友をつくりましょうねー!」
 といった雰囲気。
 気づいたら、その場にいたほかのお母さんたちと、住まいはどこか、実家はどこかの情報を開示しあう状態になっていたもんね。
 あと、こういう、ふんわりとおんなじ地域出身の人びとが集まったときには、
「どこの中学の出身?」
 という話題になるのが一般的と思いますが、これがお母さんたちの場合は、
「どこの産婦人科で出産?」
 になるというのがわかって、衝撃でした。
 どこ中学かは履歴書に書くような項目じゃん! それとおんなじなの?!
 その場にはけっきょく、おなじ産婦人科で出産したお母さんはいなかったけれど、ほかの産婦人科の通いやすさや、混み具合などを教えてもらって、なかなかに有意義でした。しかしその情報交換によって、職員さんの思惑どおり、お母さん同士の距離が縮まったのかはさっぱりわからない。
 ただまあ、娘を出産した病院は、ごはんがめちゃくちゃ豪華という風聞がたっていると教えてもらいました。うん、実際に豪華だった。当時、毎食iPhoneで食事を撮ったもん。その画像が自宅の外付HDDに保存してあるので、こんど、出先でもiPhoneから観られるようオンラインストレージにそれ専用フォルダでもつくろう、いつか、なにかのネタとして仕込んでおこう……と思いました。
 さて、問題の娘ですが、学童ルームに入ってしばらく、10分くらい、最高レヴェルの警戒態勢を敷いていて、横目であたりを睨みつける顔がブサイクやら、母にしがみつく腕の必死さがかわゆいやら、総合的にいうと、愛い奴でした。その後、どうやら安全だと判断したらしく、その瞬間からひゃっほーい! と遊ぶのに夢中になっていた切り替えの早さも含めて。たんじゅんだなあ。本能のままだなあ。