Blue Black

 祖父に、万年筆のインクが切れてしまって、と相談される。黒だとか、まじめな色はお義理にカートリッジくらいしか持っていないし(夥しいボトルインクは南の国の鳥の羽の緑とか、菫の花の匂いつきのヴァイオレットだとか)、祖父のパイロットに私のウォーターマンのがはまるかしら、と懸念したわりには、むりやり、なんとか入った。
 でもお悔やみの手紙だから筆跡が黒々としすぎるのはこまるというので、これも「ついで」程度の気持ちで買ったブルーブラック登場。
 薄墨色や鈍色になぞられえるには、ウォーターマンのブルーブラックはあまりにも青じゃないかな。青というには語弊があるような、でも青以外で呼べない独特の青。
 祖父が下書きにつかっている紙が、原稿用紙のような、だけどすこし変わっている、と思ったら碁罫紙だった(祖父は囲碁狂いなのです)。
 そういえば、碁盤って空を模しているし、黒丸は星と呼ぶし、真ん中の星は天元だ。
 空に書くお悔やみの手紙って、ねえ、なんだかちょっとできすぎ。砂に書いたラヴレターみたい。
 朝その作業をやったので、きょうはいちにち指先がすこし青かった。