春が来るたび

 そういえば。職場の先輩に恋をしたばかりで有頂天で、「私ここ数年は誕生日のたび違うひとが好きなの」と男友達に話したのが去年の四月じゃなかったっけ。
 案の定、ことしも去年とは違うひとが好きです。
「ことしのお誕生日はお互い忙しくてお祝いできなかったから、来年は盛大にしようね」
 と、Iくんは言ってくれた。
 かわいい子だなあ。
 でも、鬼が笑うよ。
 そんなわけで、二十八歳になりました。びっくりよ。





 免許書換の通知が来た。自分が自動車免許を持っていることは、平素たいてい忘れているんだけど。仕事の合間を縫って教習所に通ったあの日から数えてもうすぐ「二回目の誕生日の一ヵ月後」(まるで呪文みたい)が来るのね。
 待ち時間、近くの土手のクローバーのうえで編んだモヘアのショールの木苺色だとか、あのころ近しかったひとの顔、顔、と思い出した。
 それにしても、「免許の書換」なんてイヴェントがまさか自分の人生に起こるなんて思いも寄らなかった。そう考えると、このさきたいていのことはへいき、と思える。