台風ホテル

 先週は、海辺の展示場で、一年に一度の展示会があった。業界のたいていの企業が出展する大がかりなもの。おなじ日程で行われるべつの展示会にIくんが行くというので、それなら日程を合わせて、展示会のあと落ち合って、海の見えるホテルでゆっくりすごしましょう、ということになった。
 金曜日。展示会はすごい人いきれだったけれど、Iくんは午後はやいうちにチェックインして、お風呂に入ってこざっぱりしたあと、冷房の効いた部屋でベッドにねっころがって資料を読みふけっていたらしい。なんなのその優雅さは……。海辺のホテルにふさわしくない、汗だくのスーツ姿で合流した私は思いましたね。
 白いワンピースと麻のジャケットに着替えて、ゆうごはん。ミラノふうカツレツがとてもおいしかった。それと、ほとんど生のしゃきしゃきの玉ねぎがはいったピラフ、隠し味はアボカド。こんどまねしよう。
 近くの遊園地で閉園ぎりぎりまで遊んだあと、砂浜をすこし散歩して部屋に戻った。海無し県で生まれ育ったから、汽笛の音を聞いたり、動く船を見たりするとすごく興奮するわ、という話をした。Iくんは、それにくわえて飛行機らしい。部屋の窓からはどちらも見えて、ふたりともたいへんだった。





 翌日は台風。ホテルのロビーに、飛行機の運休情報を表示するモニタが用意されたりして、喧しくはないけれど慌しくはある、そんなちょっとめずらしい雰囲気。年配のホテルマンは部下たちになにか采配をふるい、宿泊客のマダムは台風情報を見て「あら、まあ」とひとりごちる、探偵小説なら「嵐の孤島もの」か「吹雪の山荘もの」の第二章のはじまりみたいだった。
 私たちは飛行機に乗らなくても大丈夫だったのだけれど、大事をとって早めに帰ることにした。といっても、ちょっとだけ、ホテルの近くのお店でお買い物もした。ずっと探していたオニツカタイガーのストラップシューズふうスニーカー、それもサイズがぴったりの! 履いて帰りたいほどだったけれど、プレケアもせずに、しかも雨の日におろすなんて……と泣く泣く断念。
 ああ、はやく晴れた日に履いておでかけしたい。
 三連休の中日は低気圧の影響でいちにちダウン。最終日は地震で飛び起きて、たまった古雑誌のスクラップにあけくれました。