久世光彦『マイ・ラスト・ソング 最終章』
図書館で久世光彦の『マイ・ラスト・ソング 最終章』を借りた。「人生の最期にどんな曲を聴きたいか」なんていうテーマのエッセイを十幾年もまえから雑誌に連載していたから、久世光彦はずっと死なないような、もうすでに死んでいるような、ふしぎな印象のひとだったので、去年の春に訃報をきいたときは、びっくりしていいか納得していいかわからない、へんな気持ちがした。
- 作者: 久世光彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/08/08
- メディア: 単行本
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雨がふります。雨がふる。
いやでもお家で遊びませう、
千代紙折りませう、たたみませう。
という活字の「せう」の文字のうえに、だれかのしわざでえんぴつで二重線が引かれ、その横に「しょ」と、訂正のように賢しらに、でもまずい筆跡で書き込まれていた。
ひどいなあ。
どこから非難していいのかわからない。ああ酷いものを見てしまった、と思った。