百貨店の屋上階は頽廃的
ふらりと地元の百貨店の屋上階へ。下のフロアと比べると、あきらかに空間の使い方がぞんざいで、すこし身を持ち崩した美女のような雰囲気。
ペットショップがリニューアルして、いちめんドッグラン方式になっていた。カプセルホテルのようなちいさな箱に一匹ずつ入れているより、こちらのほうがだんぜん、いい。じゃれあいながら駆け回るヨークシャーテリアとトイプードル、それに参戦したい(けれど脚の長さが足りなくて追いつけない)いさましいちびのシーズー、とにかく眠たいミニチュアダックスフントたち。
猫も数匹いたけれど、そのなかに一匹、仔猫と呼ぶには手足(まえあしうしろあし?)のすらりと伸びすぎたロシアンブルーの美人がいた。ほかの猫たちが無邪気に遊ぶのをよそに、高いところでぽつんと窓の外の一点を見ている彼女だけが、べつの世界の住人のよう。そして貼り出された値札のゼロの数も彼女のものだけ少ないのだった。おそろしい世界!
まるで、没落貴族の令嬢がたつきのために飾り窓に座っているのを目撃してしまった気分だ。
バーゲンブックフェアと称して出版社の残庫本が叩き売られていたので、白凰社の詩集をいくつか買って帰った。ヴェルレーヌ、ボードレール、西脇順三郎。
百貨店の屋上階は頽廃的だなあ。