ねこ田さんの八百屋さん

 Iくんちの近所の商店街に、いつもいっぴきの猫がいる八百屋さんがある。きれいな毛並みにおっとりと鷹揚な態度なので飼い猫かしらと思いきや、付近一帯で面倒を見ている野良猫なのだそうだ。商品を傷つけるでもなく、店頭のあたりをうろうろしているのを、かわいいのう、と眺めていたら、お店のおばさんに、
「きょうはねこ田さんがレジを打ちます〜」
 とご指名されていた。それで、Iくんと私のなかでは、そこは「ねこ田さんの八百屋さん」ということになって、買出しメモには「ねこ田でバナナ買う」だとか、書いてある。夕食時の会話なんて、
「きょうはねこ田さんちに寄った?」
「うん。トマトの空き箱のなかで寝てたよ」
「…………」
 俯いちゃって、黙っちゃったなー、としばらくIくんを観察していたら、想像してあまりのかわいさに悶絶していたらしい。ねこ田さん……恐ろしい子
 で、まんまと、ほかのお店ではなく、ねこ田さんのお店でばかりお買い物をしているわけですよ。
 ことばをしゃべれない猫でこれだもの、しゃべれるうえに、笑顔がすてきだったり、妙齢だったりするひとが接客していたら、それだけで売り上げ増が見込めるんだろうなあ。看板娘システムは単純だけれど侮れないものであるなあと思った次第です。





 自分用メモ。
 カレーをつくった日は、ごはんは多めに炊いておくこと。
(『暮しの手帖』のバックナンバーを読んでいたら、ケンタロウもおなじことを力説していた)