あまりにも気になる

 夕ごはんを食べたやきとり屋さんがすてきなところで、ご満悦。
 炭火で炙られた種々の串の、繊細な火の通り加減もさることながら、お酒の種類が豊富で、これはお酒好きのおともだちをぜひ連れ込みたいなあと思わせるところだった。
 当節、数十種類の梅酒を取り揃えたお店なんてさして珍しくないけれど、でも、どこに行っても似たような銘柄ばかりメニューに並んでいるでしょう。そこへいくと、このお店は、はじめて目にする名まえが踊っていて、さいきんめっきりお酒に弱くなったIくんと私は、心惹かれたものをすべて呑みつくすのにはたして何回ここへ通えばよいのかしらと計算をして、わくわくするようなそら恐ろしいような心持ちがした。
 まあ、もっとも、お店のなかでいちばんに興味をひかれたのは、林立する一升瓶のなかで一本だけ、
「ほんとに、まずい」
 という手書きの札が貼られた泡盛だったのですが!! ……私たぶんそれが生まれてはじめて食べ物屋さんで見た「まずい」という文字列だわ。胡麻焼酎(ロック)の酔いが吹っ飛ぶかと思った。
 あまりにも気になったので帰宅後、ネットで検索したら、通販サイトにて「個性的な味」と紹介されているのを発見。ああ……、たしかに、まずそう……。
 いつか好奇心に負けて呑んでしまいそうな惧れと、ずっと謎の味のままにしておきたいロマンと、両方感じます。